データで考える

データで考える①

孤立し無縁化する日本社会

今回のデータ:「世帯構造の年次推移」

text by 小笠原員利(@giovann0307

若者の非婚化・晩婚化が叫ばれ、離婚率の高止まりも大きな問題となっています。両者は人口減少や労働力不足、地方の衰退といったマクロの問題をもたらすばかりでなく、個人の人生やライフスタイルにも大きな変化をもたらしています。つまり「家族単位」社会から「個人単位」社会への移行です。

こうした社会の変化を踏まえて、社会保障政策自体を「夫婦と子供二人」という標準世帯を中心としたものから、個人を中心としたものに変化させるべきだと考える学者、官僚、政治家も増えてきています。

ただし、これまで人類のあらゆる社会は、家族をはじめ、血縁共同体を単位として発展してきました。「宗教」と並んで「家族」こそが、人種、民族を超えた人類の共通言語だったのです。家計や家事などの現実的側面ばかりでなく、情緒的な面でも家族が果たす役割を過小評価すべきではありません。

今回は、日本社会における世帯構造の年次推移のデータ(1975、95、2015)を掲載しました。これだけの重大な社会変化が個々の人間にもたらす歪み(ひずみ)は相当なものがあります。孤独死の問題のみならず、40代一人暮らしの鬱や一人親家庭の貧困、若者のコミュニケーション力の低下、社会的不適応、小学校における暴力事件の増加に至るまで、家族規模の縮小および「孤立化・無縁化」が少なからず影響を与えています。

例えば、東京大学の研究チームは、一人暮らしで「孤食」をする高齢男性が2.7倍の確率で鬱(うつ)になるとする研究結果を発表しました(『日本経済新聞』2015年10月31日)。また、小学校の暴力事件の増加を受け、龍谷大の松浦善満教授は「貧困状態にある家族やひとり親家庭の増加などで養育環境が悪化し、子供のストレスが増えているのかもしれない」と指摘しています(『日本経済新聞』2017年10月26日)。

家族が縮小し、単身世帯が急増する現状に対して、明確な危機意識を持たなければなりません。

(おがさわら・かずとし=UPF-Japan企画推進局長)

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