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「LGBT狂想曲」の曲がり角

代々木公園で「東京レインボープライド2017」
「人権」の美名のもとに、性的頽廃も見え隠れ


GWの代々木公園で「東京レインボープライド2017」が開催されました。今年は、パレードを含め、10万5000人が動員されたと言われ、共産党をはじめ多くの議員も駆けつけました。イベントのスポンサー企業・団体は約190にのぼり、野村證券、資生堂、ドンキホーテ、JTなど、外資系以外の有名企業も数多く名を連ねています。

企業が多く出店している背景には、LGBT人権擁護のアピールが企業イメージの向上につながるという判断があります。同時に、電通ダイバーシティ・ラボが日本のLGBT人口を7.8%と発表したことも大きいでしょう。この数字自体の信ぴょう性には疑問が残りますが、いずれにせよ、化粧品会社やブライダル産業、保険会社などは、LGBT市場を新たなマーケットとして認識しているのです。

ただし、改めて日本のLGBT人権運動の全体像を眺めてみると、そこには多くの矛盾や欺瞞が隠れていることに気づきます。それは、当日の会場の風景にも露骨に表れていました。「LGBTの人権を守ろう」というとき、一般的に思い浮かべるのは性同一性障害の深刻な悩みを抱える人たちです。何らかの理由で、心と体の性が一致せず持続的な苦痛を経験し、時には、性転換手術に踏み切るような人々の事情は、確かに理解と配慮を必要とします。

その一方で、会場には、見かけの性と異なる性の下着を身に着けて露骨な性的アピールをする人々や、アダルトグッズや、ゲイの性情報を扱う雑誌の販売店なども目立ちました。これらは、果たして、人権擁護の対象となる人々、あるいは業種なのでしょうか? 子連れでパレードに参加する若い夫婦も目立ちましたが、こうした卑猥とも言える性情報があふれる場所だと認識していたのでしょうか? 「人権」の美名のもとに、性的な頽廃が見え隠れしています。

人権問題と、性倫理に関わる事柄は、本来、分けて論じられなければなりません。性自認に関わる事柄(T、トランスジェンダーなど)と、同性愛(LGB)も、それぞれ直面する事情や、必要な対策が異なるため、政策論議の際には厳密に区別すべきです。また、性自認だけをとっても、深刻な性同一性障害から、単に嗜好としての女装、男装まで、多様な種類の人々が含まれています。後者については、個人の嗜好で楽しむことは自由ですが、人権問題として政策的な配慮をする必要はありません。

性同一性障害の人々は、人口比で非常に少ないため、人権運動を進める際に、より人口の多いLGBなどと連携してきた経緯があります。しかし、現在では、性的少数者に対する認知も十分広がっているため、両者をあわせて扱う必然性は失われています。むしろ、法整備や行政措置を要求する段階に入っているとすれば、両者を厳密に区別して議論しなければなりません。

したがって、性的少数者全般に対する認知や理解を広げる目的をもった「レインボープライド」はその使命を終えたと考えられます。むしろ、現在では、問題の本質を曖昧にし、人権問題と性倫理の問題を混同させる危険の方が大きくなっていると言えるでしょう。このままの状態では、参加する企業や政治家も、人権問題の解決に貢献するどころか、性倫理の乱れを助長する役割を担わされることになりかねません。(O)

「LGBT狂想曲」の曲がり角

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