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韓国大統領選挙を予想する

文在寅氏優勢も、保守・中道連帯で大逆転も


韓国の大統領選挙が徐々に盛り上がりを見せています。当初は、最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏の圧勝が予想されましたが、ここにきて中道の野党第2党「国民の党」で安哲秀(アン・チョルス)議員の支持率が急上昇しています。果たして大逆転はあるのでしょうか。

まず、なぜ文氏の支持率が高いかを説明しましょう。知り合いの支持者の一人は「次期大統領として準備が万全」と話します。さらに「庶民の痛みが分かり、国内の分裂と葛藤を癒せる人物。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代に青瓦台(大統領府)で秘書室長を務めたこともあり、実力は折り紙付きだ」とも。文氏支持者のほとんどが、同じような評価をしていると考えていいでしょう。

逆に、保守層は文氏の安保観に不安を抱いています。北朝鮮に融和的とされる文氏については「大統領に就任したら、最初の訪問国は米国でなく北朝鮮になる」とか、「情報機関の国家情報院のスタッフを削減すると発言した」といった報道があります。そのためか、支持率は一貫して候補者中トップを維持している反面、30%台のまま伸び悩んでいるのが現状です。

一方、安議員の追い上げの背景は何でしょうか。医師であり、ベンチャー企業家としても成功を収めた安氏も、実はしばらく前まで「過去の人」となった感がありました。しかし、朴槿恵(パク・クネ)氏の大統領職失職と潘基文(パン・ギムン)・前国連事務総長の大統領選出馬辞退などの「幸運」にも恵まれ、文氏の対抗馬として急浮上しました。現在、与党「自由韓国党(旧セヌリ党)」と朴氏と距離を置く議員たちが離党して結成した保守野党の「正しい政党」には有力議員がいないため、「安保は保守、経済は革新(進歩)」と言われる安議員が保守党の取り込みに成功すれば、逆転が可能なところまで来ました。本人も選挙を意識してか、演説中に顔を真っ赤して絶叫する場面も見られ始めました。もともと安議員の声は中性的ですが、メディアも「強(韓国語でカンと発音)チョルス」になったとその変貌ぶりに驚いています。

ここで忘れてはならない、もう一人の政治プレーヤーがいます。3月に「共に民主党」を離党した金鐘仁(キム・ジョンイン)氏です。「政界渡り鳥」と呼ばれる金氏は権力志向が強いとされる反面、政界の重鎮として保守系にも豊富な人脈を持っており、大統領選挙に出馬する意向を示しています。最も本人に選挙で勝つ気はないでしょう。浮動票や保守票をある程度集めて安議員と合流する可能性はあるかもしれません。国民の党の院内代表を務める朴智元(パク・チウォン)氏と水面下で接触しているとのうわさもあります。前出の文氏支持者も「金氏の離党は痛手」だと話しています。金氏が共に民主党から離党したのは、文氏が大統領になれないと判断したためとの見方もあるくらいです。

ただ、安氏が勝った場合、朴智元氏が実質的な権力を握るだろうという予測もあります。朴氏は金大中政権で青瓦台で秘書室長を務めており、基本的には左寄りの人物です。

そのような意味では今回の選挙は保守にとって厳しい結果となりそうです。

(H=ソウル在住)

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