女子大生がみた日韓関係のリアル

家庭・教育・次世代人材

いよいよ始まった「平昌」と、そのあとに控える「2020年 東京」の両オリンピック。さらに北朝鮮の脅威と中国の軍事的・経済的プレゼンスが高まるなか、日韓を含む東アジア地域に世界の目が注がれています。サッカーワールドカップの共同開催(2002年)や、“韓流ブーム”を経て、一時、友好ムードが高まった日韓関係。しかしその後は、竹島(韓国名:独島)、さらには慰安婦問題での少女像設置や日韓合意の取り扱いなどをめぐり、関係は急速に冷え込み、多くの課題を抱えたままです。国の威信を背景に、政治、経済リーダの間では両国の複雑に絡まった結び目は容易には解けそうにありません。一方、若者世代では日韓混合のKポップアイドル「TWICE」が人気を集めるなど、より自然な形で両国の交流が進んでいるようです。「平和大使オンライン」では今回、日韓のハーフである石井さん(父:日本人、母:韓国人)、姜さん(父:韓国人、母:日本人)、そして韓国文化に関心が高く、韓国人の友人も多い日下部さんの現役女子大生3人に集まってもらい、若者世代から見える「日韓関係のリアル」について語り合ってもらいました。

Kポップ、タッカルビ、コスメ… | 日本の若者に浸透した韓国文化

石井:きょうは「日韓問題」をあまり難しい切り口からではなくて、まずは日本、韓国それぞれの側から互いをどう見ているかといった、私たちの世代の経験ベースの話を中心に語り合えたらと思います。まず、韓国っていったら何が思いつく?

日下部:一番最初に思いつくのはKポップですね。家族で東方神起が好きで、コンサートにも行きました。

石井:逆に、韓国では日本の嵐とか有名?

:好きな人は好きだけど…

石井:日本のKポップ人気ほどではない?

日下部:そうですね。日本で紅白(歌合戦)とかあるじゃないですか。東方神起とかでも出るので。Kポップのアーティストは受け入れられているのかな、と。

:日本ではKポップのダンスが人気。日本に来てびっくりしました。

石井:ほかに何かありますか?

日下部:結構、遊びに行ってます。韓国に。

石井:何して遊ぶの? 韓国で。

日下部:やっぱりおいしいものを食べるとか(笑)。

:チーズ・タッカルビとか! すごい人気だよね。

日下部:うんうん。でもあっちで食べたことないですね。

石井さん

石井:韓国にチーズ・タッカルビあるの?

:あるよ。ほかにはコスメとか?

日下部:買いますね。MISSHA(ミシャ)とか。

:新大久保とか。びっくりした。

石井:高くなってるけど。あと、服とかも結構。

日下部:そうですね。安い。

石井:安いってのもあるし、センスがさ、日本と違う。

:そう、違うね。日本だとみんな花柄を着るイメージ。

石井:そういうのにちょっと飽きた人が韓国のとか、買いにいきたがるね。あとテハンロ(大学路 *1)行った? ミュージカルとか劇とかたくさんやっている所。

日下部:見たことないんですよ。韓国で劇とか。見てみたいですけど。

:場を楽しむ感じの所?

石井:韓国はそういう風にすぐ作っちゃうよね。日本なんか、ミュージカルのストリートとかないじゃん。結構、昔からのそのままやっている。韓国はあとさき考えずにすぐに街並みや建物を変えちゃうイメージがある。日本とかさ、地下鉄も昔から駅の形とかプラットフォームとか、そんなに変化がない。ホームの転落防止ドアもなかなかできないじゃん。韓国、いきなり全部できちゃう。

:人身事故がないようにするやつね。あれ、日本にも全部設置したらいいなって思う。

石井:日本が固すぎて動けないというところもあるかな。韓国はもっと柔軟。

石井:姜さん、日本に来てどう?

日下部:何年ですか?

:2年目。思ったより、日本人って韓国人が好きだなって思う。来る前までは、小学校、中学校で日帝時代の博物館に見学に行ってたから仲が悪い印象があった。

石井:西大門刑務所(ソデムンヒョンムソ *2)? あれ、すごいおどろおどろしいところだね。

:中学校くらいの時に行って、そういうのだけ見て、もうちょっと…。

石井:お化け屋敷みたいになってる。にゅっと(笑)。

姜さん

:そうそうそう! そういうのばっかり。

日下部:一般人も行けるの?

:行けます。

石井:半分、歴史勉強、半分、ホラーみたいな(笑)。

:本当に怖い。人の模様とかが、血を流したり、そういうのを拷問されてるみたいなのをつくっているから。

日下部:日本人にやられてる?

:やられてるみたいな。ちっちゃい頃から教育を受けてくるからしょうがない。でも、意外と日本に来てみると、みんなKポップとかコスメとか好きっていうから、ああ、意外と若者は仲いいんだな、と思いました。

石井:結構、そういう記念館とかあるもんね。3・1独立運動の…

:柳寛順(ユ・ガンスン *3)?

石井:そう! ユ・ガンスンの記念館に行ったんだけど、あそこもお化け屋敷…。記念館に行くと、全部怖い、なんか基本的に。よくそこまでやるねって感じで。でも日本は、逆にあまり歴史を振り返りたくないみたいな感じ?

:うんうん。

日下部:全く知らないですね。

石井:記念博物館みたいなものもない?

日下部:あったとしても…

石井:昔の土器とかさ、戦国時代の刀みたいな(笑)。

日下部:お城とか?

石井:近現代史の資料館と言えば、広島の原爆ドームとか? それくらいかな。ほかにあるかな。

日下部:長崎?

石井:平和祈念館ですね。

日下部:そういう所に日本の若者ももっと行くべきだよね。Kポップわーいわーいもいいけど。

石井:私も韓国留学中、高校の時に行ったんだよ。でも、行ってみると、なんかこう歴史を重く感じるというより、怖い、みたいな。

:そうだね。

韓国の歴史教育 | 日帝時代の記述が教科書の5分の1!

石井:歴史博物館ってほかの国にはだいたいあるって聞いたんだよね。日本がないのがおかしいみたいな。第二次世界大戦以降にできた国が多いから、戦争を経て独立した足跡をきちんと残そうと。そういう記念館は多いんだけど、日本は戦争というと逆に痛ましい記録って感じだから。それで作らないんだよね、きっと。でも、韓国は、別に世界大戦をルーツにしてできたわけではないよね。

:違うね。

石井:もとから朝鮮半島に存在するみたいな。

:そうだね。

石井:私、よくわかんないんだよね。そこがいまだに。歴史を勉強してても…。

:韓国の歴史って、ただ日帝時代しか語らないイメージ。メディアも。日本はこうだ、みたいな。

石井:でも韓国は日帝以前からずっと続いている国のはず。

:そうだよね。

石井:日帝時代に国のルーツがあるから強調しているわけじゃないんだけどね。韓国の教科書は、例えば厚さがこれくらいあったら、1/5ページくらい日帝時代についてじゃない。長いんだよ。韓国の歴史は3000年とか、神話から始まって長いんだけど、教科書で教える1/5くらいは日帝時代。

:そうそうそう!

日下部:結構、恨んでますね、韓国は日本のことを。

石井:どうだった? 歴史の授業。

:先生とかが日本を好きじゃなかった。言い方が…。友達はみんな、(韓日のハーフである)自分のことを気遣ってくれたけど。でも今は、逆に、日本の大学で日本の見方を学んでるから、それはすごくいいと思う。

石井:結構、歴史の先生、感情的に。

:韓国人は基本、感情的だからね(笑)。

石井:私も韓国の中高に通って。ばりばり日本人の名札つけてるからさ、先生は、私個人を攻撃するわけじゃないんだけど、すごい言われようをするからさ。

:そこまで言わなくても、ってね。

石井:でも、授業を受けた子たちが、そんなに反日感情を抱いているかと言うと…。

:そんなことないよね。

石井:そう、そういうわけじゃなかった気がする。

日下部:先生が個人的な感情でってことですか?

石井:だから、先生は教壇でそういう教育をしなければいけないから、そういうふうにやってる、みたいな。普通に授業が終わって私は、「なんか、先生やばいな」みたいな感じだけど。そんなにショックを受けて泣くとか、そういうレベルではなかった。友達は「大丈夫だよ、みたいな。心配しないで」って。

日下部:どんな内容なんですか?

石井:韓国語を教えるのを禁止して、日本人は韓国語を奪った、名字を奪ったとか…。

:よくある。

石井:あと、独立運動をする人をどれだけ虐げたか、とか。ある意味、韓国のヒーローだからさ。日本でいう坂本龍馬とか、そういう人たちが独立運動家なんだよね。そんなニュアンス。

:そうだね。

日下部:私は中学の時、歴史の授業で、韓国と日本の関係についてあんまり教えられなかったと思います。教科書でいうと、1ページとか、そんなものだと思います。どちらかというとアメリカに対してのことが多かった印象。

石井:アメリカとやってる戦争がメイン。

日下部さん

日下部:でも歴史の先生が、日本が韓国人にたくさんひどいことをしてきたんだよ、みたいなことを言っていたのは覚えています。例えば、なんだろう。穴ほれ!っていって、掘らせて、足で韓国人を蹴って埋める、というのは、中学校の歴史で知って、日本はそんなひどいことしてきたんだ、って思いました。

石井:でも韓国もベトナム戦争の時に現地の女性にひどいことをしてたんだよね(*4)。

:そうですね。

石井:歴史の授業ではあんまりやらないね。

:やらないね。

石井:だから、歴史なんて自分で勉強しようと思わない限り、教科書通り受け取るしかないから、そこは難しい。

日下部:うんうん、ほんとに。もし、あんまり歴史の本とか読まない人は、先生の言った言葉を覚えるから。私みたいに(笑)。だから、本当はそんなに悪いことしてないじゃんって思うかもしれないし。

メディアの功罪 | 国民の真情と開き?

:あとは、メディアとかの影響もすごい受けやすいから。

日下部:メディアね!

石井:でも、韓国の子たちはあんまりメディア信じてないんじゃない。

:いや、信じてるよ。

石井:ほんと? なんか、あんなこと言っているけどどうせ、みたいなのはない?。

:それは政府に対して。

石井:韓国政府に対する信頼があんまりない。

:でも、今の文在寅(ムン・ジェイン)政権については、若者からすごい人気がある。

石井:一つ前はひどかった。政権にもよるけどね。日本のニュースと韓国のニュースを両方見ていると、これが、韓国国民の意見ではないだろうな、みたいな。

:例えば?

石井:韓国の独立記念日(8月15日 *5)があるよね。その日に、朴槿惠(パク・クネ)前大統領が演説をしてたんだけど、あまり日本批判をしなかったっていってメディアに叩かれてた。でも実際、私の友達からそんな批判聞いたことがない。でも、これを日本では、ニュースで「韓国でこんなに批判されてる」ってみるわけでしょ?

:最近でいうと、12月19日に日本の安倍首相と韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相が会談した時に、安倍さんの座った椅子の高さが高くて、韓国側を見下ろしているようだと韓国のメディアが批判してたよね。そこまで考えるかな、と思ったけど。

石井:でも実際、そうなんだって思っちゃう人もいるだろうね。

:いつも歴史を見てると、前に進めないんじゃないかと自分は思っていて。もっと、北朝鮮問題への対応とか、韓国と日本で連携を強めてやっていくべきことが多いのに、ずっと後ろばっかり見てる感じがする。

日下部:私、韓国人の友達が大学にいて、その友達が言っていたのが、安倍さんが言ってるのは「この金あげるから、戦争のこと忘れてくれ。今後はそういうのを一切出さないでくれ」ということで、そのお金をもらった韓国人も問題だけど、そういうふうにお金で解決しようとする安倍さんが嫌いだ、みたいなことを言ってた。私はなんとも言えなかったです。

石井:でも歴史ってさ、安倍さんが何か言ったからと言って、どうにかなる問題じゃないような。

:そうだね。きりがない感じ。韓国人って、日本の全ての政権に謝罪して、お金を払って、謝罪を願うみたいなことをいつも言っていたら。

石井:正直に言って、私が韓国の友達と歴史の話をしても、謝ってくれって言われたことないんだよ。

:うん、言わないね。

石井:責任って、自分がやったことにしか取れないけど、そういう感情をあまり持てないと思うんだよ。それって、一対一だと当たり前じゃん。

:そうだね。

石井:あなたのひいおばあちゃんがやったから謝れ、とか。でも、その二人は、そのことについては関係ない。

:うん、そう思う。

石井:個人では謝れって言われたことがないのに、メディアを通して、国を通してとなると急に…。

愛国心 | 「反日」以外にどうやって育てるか

:三国時代には、日本と韓国がもっと歴史的に一緒に協力したような、白村江の戦い(はくすきのえのたたかい *6)とかもある。もっとそういうのを強調できないかな、と思って。

石井:日韓というと、日帝時代の40年だけじゃないからね。

:イギリスとフランスも昔はすごい戦ったりしたのに、今は和解してる。

石井:努力すればできないことはないんだけど、日本はアメリカとだけ同盟を結べばよかったから、あまり歴史問題のことを調節するとか必要なかった。でも、英仏はEU(欧州連合)を作らないといけなかったから、いろいろと調節をしたっていうのはあると思う。日韓で同盟関係もつくったら、ある程度、変わるんじゃないかな。

:私も思う。日韓関係が強くなれば韓国は絶対、利益を得るほうだと思っていて。わざわざ歴史問題とかを話題にして、関係を遠ざけるのは韓国側としても損害じゃないかな。

石井:本当に韓国のことを思うなら、ね。でも政権によると…。

:今は、中国大好きだしね。

石井:政権は票を得ないといけないし、ちょっと政権に都合の悪い事件が起きそうになると求心力を高めるために反日が使いやすい。

:そう、使いやすい。今の前の前の李明博(イ・ミョンバク)大統領の時も、急に独島に行ったり。

石井:急にね。そんな気配なかったのに。

:それにすぐ洗脳される国民も…。

石井:本当に韓国と日本は、地域を見ても同盟を結ぶべきなんだけど。

:国民の世論の質が低いと思う、韓国は。

石井:民主主義がね、ちゃんとした方向に機能しないとね。

:一般国民はそうだね。だって、教育からずっとそうやって受けてきたから。愛国心とか。それはしょうがないと思う。もうちょっとね。違う教育の仕方をしたらいいのにね。

石井:国民が国に愛着がないよりも、愛国心を持っていた方が、全然、いいじゃん。でも、どうやって愛国心を育てるかといったときに、反日教育以外に韓国ができることがあるか、みたいな。

:一番効果的だよね。反日が。

石井:ダイレクトに効くからね。普通に。でも、敵をつくってそれに向かって戦ったという。韓国にとってはそれが独立運動…。

:だよね。

石井:だから臨時政府を中国かどこかに作って、それを拠点にしてみんな戦ったんだぜ、って。そういうのを動画とかでさ、感動的なふうに作ってさ、授業中に見たりしてさ。

:わかる。

石井:それ以外に効果的な方法はあるのかな。愛国心を育てる方法が。

:愛国心を育てる必要がある? わざわざ。

石井:韓国人が国を愛せなくなったら、どんどん韓国からいなくなっちゃう。私、中国人になりますけど、みたいな。

:日本はどうやって愛国心教育をするの。

石井:日本はさ、政権がぐじゃぐじゃやっているうちに歴史教育をどうするか、定められなかったよね。だから結局、元号を覚える歴史、何年に何がありました、っていう。

日下部:そうそう、テストできればいい、みたいな。

石井:日本はテレビでよくやるじゃん。「Youは何しに日本へ?」とか、日本に来たい人招待します、みたいな。それで日本を。結局、日本自慢(笑)。そういうので日本はすごいじゃん、ってやろうとしてるけど。

日下部:平和ボケだと思います。日本は。あまり、海外に出てない人とかは。すごいいい国だから、もともとは。

:思った。あんまり英語を喋れる人もいないし。ほんと思った。

石井:話しかけられてもびびるからね。びびって、ああ、おおって。

:留学行かないんですか?って聞いても、別にって。

日下部:日本にいればいいやみたいな。

:韓国はすごいそうなっているんじゃない? 国のことを言う時も「ウリナラ」だから「私たちの国」。そういう感じだけど。日本はそんなのないよね。

慰安婦問題 | 謝罪の有無より悲しみの共有が必要では

石井:今、授業で歴史学をやっているんだけど、歴史の勉強ではなくて、歴史について考える。歴史をどう扱うべきか。歴史って国が扱っていいものなのかっていう。国が教科書を検定して歴史をまとめて国民に教えているけど、それって本当にやっていいことなのか。歴史って、事実からかなり歪曲されやすいものじゃん。だとすると、それって国がやっていいことなのか?

:そうだね。ただ、日本の歴史の見方も学びたいよね。日本に来て、日本はこういうことを考えているんだなって初めて分かって、すごい留学してよかったって思ってる。歴史教育は難しいね。

石井:歴史問題は国同士が仲良くならないと、どうにもならない問題なのかなって。

日下部:本当ですね。

:うちのお父さん(韓国人)は、すごい日本の立場を理解して話してくれるから、慰安婦問題とかが出ても、全然、母(日本人)とけんかとかない。

石井:うちはお母さん(韓国人)が日本に嫁いできてるけど、ちょっと韓国の歴史を雑に扱う日本については、そうじゃないんだよ、ってことを私にずっと言っている。雑に扱っていい問題じゃないんだ、っていうのをいつも言ってた。うちはおばあちゃんがちっちゃい時に戦争をやっていたから、慰安婦問題についても、「韓国はいつになったら日本批判をやめるんだろう」って日本人が言ってたとしても、「でも、ちゃんと韓国の声を聞いてあげたほうがいいよ」って、いつも言っていた。

:アメリカに慰安婦の記念像を建てた、みたいなニュースもあるよね。

石井:でも実際、慰安婦問題で大騒ぎしているのは、日本と韓国だけって。国際的には一般的な戦争で被害にあった女性たちに対する活動として見られているから。だから、日本にダメージを与える活動っていうよりかは、戦争被害女性をなくそうという活動になっている、っていう外国の先生がそういう話をしていた。

:韓国の中でも、歴史問題や慰安婦問題とかをいったん横に置いておいて、もっと北朝鮮政策とかで連携しようっていう声があるらしいですけど。

石井:でも、私はそれを置いていくべきじゃないと思う、絶対的に。近代史とかの勉強をしていても、歴史がないと今の日本がないというか。だから現在と歴史的な過去というのは断絶されたものではないから、歴史を無にしてしまったら、今がなくなってしまうというのは、歴史を勉強するとすごく感じる。過去のことは置いておいて今は仲良しじゃん、っていうのもいいと思うけど、そういう悲しい過去があったよね、だから一緒に韓国に行って慰霊でもしましょうか、みたいな関係のほうがいいかな。そっちのほうがもっと強い関係なのかな、と思ったりする。

:慰安婦ってきくと、もう感情的になっちゃうから、韓国は。だから、なかったことにしようじゃないけど、一応、置いておいて、と。

石井:慰安婦について葛藤するというのは、結局、日本がなんとも思ってないからじゃない? 政府が謝ったからいいじゃんっていう。でも韓国からしたら、政府に謝られても、みたいな。

:そう?

石井:安倍さんが謝りました。でも、なんで謝ってるんだ、そんなことするんじゃないという世論も聞こえてくる。韓国からすれば日本の国民世論がどうなっているかというのも重要じゃない?

:でも、国民の謝罪の気持ちって目に見えなくない?

石井:例えばドイツでは、かつて迫害されたユダヤ人の住居前の路上に氏名などを刻んで埋めた金属プレートの敷石(「つまずきの石」 *7)を設置して、それを見て自分たちがユダヤ人を迫害したこと、そういう悲しいことがあったんだということを思い出すようなことをしてる。日本にそういうものがあるかというと、ないじゃん。頭を下げるということだけじゃなくて、ちょっと一緒に悲しんでほしい、とか。なかったことにしてほしくない。そういうふうに、謝る、謝らないというよりも悲しみを共有する、というほうがいいんじゃないか、と思うんですけどね。

 

【注】
*1 テハンロ(大学路) 演劇の街として有名な、ソウル市内のエリア。
*2 ソデムンヒョムソ(西大門刑務所) 日本の植民地時代に多くの独立運動家や民衆が投獄され犠牲となった刑務所跡地の博物館
*3 ユ・ガンスン(柳寛順) 3・1独立運動を主導した英雄。当時16歳の少女で、「韓国のジャンヌ・ダルク」と称された。日本の官憲に逮捕され、拷問の末に獄死した
*4 ベトナム戦争での韓国軍の行為 ベトナム戦争当時、米軍の介入が本格化した60年代後半に、韓国軍はベトナムの中央高地の複数の村で住民を大量虐殺したといわれる。また、旧日本軍の「従軍慰安婦」と同様の事例として、韓国軍にもあったと非難されており、韓国兵とベトナム人女性の間に生まれた多数の混血児「ライダイハン」の存在が知られている。ただし、そのどこまでが性的虐待の結果かは不明
*5 韓国の独立記念日 日本の終戦記念日に当たる8月15日は韓国の独立記念日で「光復節」と呼ばれる
*6 白村江の戦い(はくすきのえのたたかい) 朝鮮半島南西部にある白村江で、日本が支援する百済軍と、唐と新羅の連合軍が行った海戦
*7 つまずきの石 1993年に始まった「Stolpersteine(つまずきの石)」と呼ばれるプロジェクト。ケルン在住の彫刻家グンター・デムニッヒ(Gunter Demnig)氏が創始者と言われる

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