いまさら聞けない「仏教の基礎知識」

いまさら聞けない「仏教の基礎知識」 第4回

「中道」と「縁起」の理法

text by 魚谷俊輔

お釈迦様が6年近くにわたる苦行生活の後に、菩提樹の下で瞑想することを通して悟りを開かれたというエピソードから、仏教のポイントの一つを理解することができます。それは、いたずらに体を苛める、たとえば断食し続けるとか、いろんな難行苦行をすることによって悟れるというものではないということです。だからと言って、飲んで食って快楽に浸っていて悟れるというわけでもないのです。悟るということは、この「苦」と「楽」の中道にあるということです。極端から離れて、正しい見解を持つこと、これがお釈迦様の教えられた「中道」ということです。

お釈迦様は、菩提樹の下で悟りを開かれた後に、約45年間にわたって、自分が悟った真理を伝える人生を歩まれるようになります。5人の修行仲間に初めての説法を行ったことを「初転法輪」と言います。当時、お釈迦様は身分や職業で人を差別することなく、誰にでも求める人には真理を教え広めたので、非常に多くに人々がお釈迦様のもとに集ってくるようになりました。

当時のインドの宗教であるバラモン教は、どうしてもカースト制度に縛られていて、一番高いカーストの人々を優遇して、賤民を差別していたので、旧来のバラモン教に飽き足らなかった大衆の心をとらえ、出家者だけでなく在家信者も増えてゆきました。当時、マガタ国のビンビサーラという王様がお釈迦様の教えに感動して帰依し、首都・王舎城郊外の竹林を寄進しました。これを「竹林精舎」といって、林の中で修業を行ったわけです。ここにお釈迦様のコミュニティが出来上がって、ここで長らく教えを説かれたということです。そして、80歳で亡くなられるわけですが、これを「入滅」と言います。その時まで、生涯にわたって法を説かれました。これがごく簡単にまとめたお釈迦様の生涯であり、仏教の出発点になります。

お釈迦様が解明された仏教の教えというのは、とても哲学的で合理的な教えです。お釈迦様は菩提樹の下で悟ったというのですが、何を悟ったのかというと、「縁起」の理法を悟ったと一般的には言われています。それでは「縁起」とはどういう意味なのでしょうか? 日本人は縁起が良いとか悪いとかよく言いますが、もともとの縁起の意味は、いかなるものごとも独立して存在しているのではなく、つねに他のものとお互いに関係し合っていおり、そして、条件しだいで変わりつづけていくものであるということです。これを「無常」というわけですが、お釈迦様の悟った真理とはこのような内容でした。

(魚谷俊輔/UPF-Japan事務総長)

④「中道」と「縁起」の理法

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