いまさら聞けない「日本基督教史」

いまさら聞けない「日本基督教史」 第32回

キリスト教の左傾化

text by 魚谷俊輔


それではなぜ日本のキリスト教徒は増えなかったのでしょうか? 戦後の日本のキリスト教の問題点をまとめると以下のようになります。

まず、戦前に権力に屈したことに対するの反省から、キリスト教は急速に反権力、反天皇主義に傾斜していきました。つまり、戦争をやっていたころには権力の言いなりになり、天皇陛下に屈服してしまったので、それが終わってから逆に反発している状況であるわけです。そうすると、この反権力とか反天皇というと、非常に思想的に相性が良いのが左翼ということになってしまいます。ですから、共産党や旧社会党などと結び付いて反靖国運動などを展開して、どんどんキリスト教が左傾化していくということが起こりました。

左傾化する日本キリスト教界を象徴する事件が、1949年に起きた赤岩栄牧師の「共産党入党宣言」でした。彼は、理論的にも実践的にもキリスト教と共産主義とが両立しうると主張して、日本基督教団の牧師のままで共産党入党宣言を行ったのです。最終的には教団幹部の説得により入党を思いとどまりましたが、「信仰はキリスト教、実践は共産主義」を主張して、教団を分裂させることになります。

1960年代・70年代の安保闘争は、日本基督教団の神学校である東京神学大学にも影響を及ぼすようになり、1970年には「反万博闘争」と呼ばれる学内紛争が起こります。これに対し、東神大教授会は機動隊を投入して社会派の学生を排除しました。これが「社会派」と「教会派」という日本基督教団内の紛争に発展し、特に1971年5月の東京教区総会は、乱闘、流血の事態になりました。その後、社会派のキリスト教は、反靖国運動、天皇制反対運動、部落差別反対運動、反核運動など、左翼勢力の好む社会的テーマを追求することにより、完全に共産主義に乗っ取られてしまうような形になります。

すなわち、キリスト教でありながら共産主義思想と結びついてしまったのです。共産主義とか社会主義というのはもともと唯物論ですから、そういうものと結びついてしまうと、キリスト教の持っている本来の霊性が失われてしまいます。したがって、環境的には恵まれているにも関わらず、信者は増えないということになったわけです。環境が恵まれているにもかかわらず信徒が増えないということは、キリスト教自体が失敗したと考えるほかありません。基本的には、共産主義にやられてしまったということが、大きな失敗であると言えます。

(魚谷俊輔/UPF-Japan事務総長)

キリスト教の左傾化

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