いまさら聞けない「日本基督教史」

いまさら聞けない「日本基督教史」 第17回

他に類例を見ないほどの過酷な迫害

text by 魚谷俊輔


1638年の鎖国令によって、日本は外国人に対して閉ざされました。そして1614年の時点ではおよそ60万人いた日本のキリスト教徒は、結局1697年までに表面上は絶滅してしまいました。非常に激しい迫害によって、一時期60万人いたキリスト教徒は、日本の地から消えてしまったということです。実際、60万人いるキリスト教徒を根絶やしにするというのは、執拗で徹底的な迫害をしない限りは不可能です。

私がアメリカで神学を学んでいたころ、「キリスト教会史(Church History)」という科目が好きで熱心に勉強しました。その中でキリスト教がいろんな国に宣教されていく歴史も学んだんですが、その教科書の中に「日本においては、キリスト教の宣教史上、他に類例を見ないほどの過酷な迫害が行われた」と書いてあるのを見つけました。

私はそのとき「何を根拠にそんなことを言うんだ」と思いました。なぜならキリスト教はローマ帝国でも長期間にわたって弾圧を受けているし、宣教を行った行く先々で迫害されているのです。それなのに、なぜ日本だけを「他に類例を見ないほどの過酷な迫害」と言うのかと思いました。しかし、その理由は書いてありました。ある宣教地にキリスト教が伝えられて、少なくとも一世代(One Generation)以上にわたって存続して、教会の基盤が確立された後に、その地から跡形もなくキリスト教がなくなってしまうなどということは、他に類例がないというのです。

宣教師が行って10年経って、迫害が始まって全員追い出され、教会がなくなったというようなことはいくらでもあります。しかし、このとき日本のキリスト教は宣教されて100年近く経っていたのです。キリスト教の信者は、一世代どころか、二世、三世、四世までいたはずです。100年続いていて、60万人という膨大な数のキリスト教徒がいたにもかかわらず、それを消滅させたということでありますから、どれだけ過酷な迫害をしたのかということです。それだけ徹底的に、しらみつぶしに、キリスト教をなきものとするために迫害を行った国が日本だということです。

キリシタン時代の迫害について知るには、歴史書を読んでも良いですが、私がお勧めするのは遠藤周作の小説です。次回はキリシタン時代を扱った遠藤周作の小説を紹介します。

(魚谷俊輔/UPF-Japan事務総長)

他に類例を見ないほどの過酷な迫害

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