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「結婚」と「同棲」に違いはあるか

正式な約束は関係の質を高める


非婚・晩婚化が進み、「出生率回復のためには婚外子を増やすべき」という怪しげな論説も飛びかうようになりました。果たして、一夫一婦の婚姻制度を相対化して、結婚と事実婚を同等に扱うような社会に未来はあるのでしょうか?

結婚は同棲よりも優れている

11月6日、結婚と同棲について米国のピュー・リサーチセンターが興味深い調査結果を発表しました。それによると、同棲中のカップルと、正式に結婚したカップルとでは、相手に対する信頼や満足度に明白な違いがあったのです。もちろん、より高いスコアが出たのは結婚したカップルの方です。

たとえば「相手が貞節を守っている」と信じる割合は、結婚カップル84%に対して、同棲カップルは71%。「相手が2人の利益のために行動している」と信頼する割合は結婚74%、同棲58%となっています。同様に「常に相手が真実を語っている」と信じる割合は、結婚68%、同棲52%。「責任をもったお金の使い方をしてくれている」と信じる割合も結婚56%、同棲40%と、いずれも結婚しているカップルの方が、より相手を信頼していることがわかったのです。

満足度についても、相手の子育てへのかかわり方、雑用の分担の仕方、コミュニケーションなど、いずれも結婚したカップルの方が、より満足度が高くなりました。さらに「相手を、他の誰よりも親しく感じる」割合も結婚では8割近く(78%)に達し、同棲の55%を大きく上回りました。

どうして、そのような違いが出るのでしょうか。断言はできませんが、関係を結ぶ際の理由や動機が関連しているかもしれません。実はこの調査では、結婚、あるいは同棲に至った主な理由も調べています。

それによると、「結婚に至った理由」では「愛情」(90%)、「友情」(66%)が1位、2位。「正式な約束をしたかった」(63%)が3番目となり、逆に「経済的合理性」(13%)や「利便性」(10%)を挙げた割合は1割前後にとどまりました。一方、同棲に至った理由で「愛情」(73%)「友情」(61%)に続いたのは、「経済的合理性」(38%)や「利便性」(37%)でした。そして、「正式な約束」のかわりに「関係を試してみたかった」(23%)が入るなど、非常に一時的で、自己都合の要素が高くなっています。ちなみに「子供が欲しかった」という理由も結婚(31%)が同棲(14%)より2倍ほど高くなっています。

より2人の関係に対するコミットメントの度合いが強い正式な結婚の方が、単なる同棲よりも2人の関係の質を高めるのは当然かもしれません。

同棲のリスクに対する認識が不足

この調査では、特に若い世代を中心に同棲に寛容な態度が増えていることも明らかになりました。結婚の予定がないままの同棲についても、全体で69%、18~29歳の若者では78%が「許容できる」と答えました。ただし、同棲に対する肯定的な見方は、いくつかの誤解に基づいています。

一つは「結婚前の同棲」がもたらす効果についてです。全体の半数近く(48%)、若者では6割以上(63%)が、「結婚前に同棲すると、結婚後の生活に良い影響がある」と答え、「悪い影響がある」と答えたのは1割ほどにとどまりました。しかし、事実は逆です。各種研究では、結婚前に同棲を経験したカップルは、そうでないカップルに比べて、結婚生活の質が低く、離婚も多くなることが分かっています。

また、子育てに関して「結婚と同棲が同等」と答える割合も、全体で約6割(59%)に上りましたが、これも大きな間違いです。米国の家族学者による研究では、同棲カップルの関係は、結婚した夫婦よりも不安定で、子供が幼くして両親の別離を経験する割合が高くなります。その結果、子供の成長にとって、社会的、教育的、心理的な悪影響が出ているのです。

正式な「結婚」は、公式な誓約がないままの「同棲」に比べて、相手への信頼や満足度、関係の安定性や子供の養育など、あらゆる面で優れています。婚姻制度を曖昧にすることは、カップルにとっても、その子供たちにとっても危険な風潮だと言えるでしょう。

(O)

「結婚」と「同棲」に違いはあるか

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