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防災意識を高め助け合いコミュニティづくりを

気候変動と“日常化”する災害に備えよう

世界各地で豪雨による洪水・浸水や、山火事など気候変動による災害が頻発しています。

7月上旬、2週間近くに渡って九州各地に甚大な被害をもたらした「令和2年7月豪雨」では、熊本県を中心に68人が犠牲になりました。梅雨前線の存在と相まって積乱雲が連なる大規模な線状降水帯が形成され、予測できないほどの雨量になりました。気温が上昇すると海上の水蒸気量が増え、積乱雲が発生しやすくなります。今回、これが大量に連なることで、激しい雨が長時間続くという事態が起こったのです。

世界を見渡すと今年、朝鮮半島に被害をもたらした5つの台風は、すべて南側から北に直進する異例の経路を示しました。このような現象は、気候変動の影響である可能性が高いと分析されています。韓国内陸部や北朝鮮の東北地方など、ふだんは台風の影響を受けない地域も被害が大きくなりました。

米国の西海岸では、記録的な規模の山火事が広がっています。カリフォルニア州は記録的な熱波と干ばつに見舞われ、8月半ばに約1万4千の落雷が発生。各地で大きな山火事が発生しました。現在も大規模なものだけで30近い山火事が続いています。オレゴン州では約50万人が避難準備や避難指示の対象となり、米メディアによると、ワシントン州を加えた3州の犠牲者は25人に上っています。

日本はその位置や地形、地質、気象などの自然由来の条件によって、古くから台風、豪雨、洪水、がけ崩れ、地震、津波、火山の噴火など災害が発生しやすい国です。そのため、日頃から災害に対する備えを心がけ、「自らの命は自らが守る」という意識は高いと言われています。

しかし、前述の状況を見る限り、本来、自然自体が有している減災機能や、行政や地域コミュニティがかねて整備してきた施設だけでは防ぎきれない激甚化のリスクが高まっていることは明らかです。

9月1日は「防災の日」。台風や高潮、津波、地震などの災害に備える目的で、1960年に制定されたもので、この日、政府や行政などによる防災訓練が実施されました。今年は新型コロナの影響で訓練の中止も相次ぎましたが、地震や台風などに備える災害訓練を規模を縮小して実施した地域もありました。

民間と行政の連携も始まっています。ヤフーと滋賀県は同じく9月1日、「Yahoo!防災速報」アプリと「Yahoo! JAPAN」アプリのプッシュ通知機能を活用して滋賀県のユーザーにハザードマップなどの確認を促すオンライン防災訓練を実施しました。事前にハザードマップなどで自宅や職場など身の回りの安全確認をすることで、万一の事態に行動判断に役立ててもらおうと「#生かせハザードマップ」キャンペーンとして企画されました。

災害が起きたとき、まず自らが自らの命を守ることが何より大切ですが、高齢化や核家族化などにより一人暮らしの高齢者や、高齢者だけの世帯が増えていることにも留意しておかなければなりません。山間地などの地域では、過疎化により限界集落ともいわれるような地域が増え、近くの地域とのつながりが薄くなっています。少子高齢化や過疎化により地域のコミュニティそのものが崩壊しかけていることも問題になっています。

自治体ごとに、災害が起きる前にあらかじめ集まって地域の危険性を一緒に考えたり、どういう状況になれば逃げるか、あらかじめ基準を決めておくことが大事です。お互いの連絡網を作っておくなど、ふだんから周囲とのつながりをもっておくことで被害を少なくすることができるかもしれません。災害時に声をかけ合い、皆で早めの行動を起こすことができるように日頃から防災意識を持ちながら、地域のコミュニティづくりをしていくべきです。

今後、気候変動による風水害や土砂災害、さらに地震やコロナ禍などの複合災害のリスクがますます高まることを念頭に、子供から大人まで日常的な防災意識を高めるしくみづくりが求められています。

(H・S)

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