米中対立で揺れる国連と日本の役割

米中対立で揺れる国連と日本の役割 第5回

国連安保理、「拒否権」乱発で機能不全に

text by 魚谷俊輔

 

国連の中に共産主義の侵入を許してしまったということ、これが国連が創設直後に抱えた大きな問題、すなわち「機能不全」に直結していくことになります。

国連は6つの大きな機構からなっていますが、その中でも最も重要な2つが総会と安全保障理事会と言われています。国連総会は、国連加盟国全てが参加している組織ですが、この総会の勧告には拘束力がなく、当事国にたびたび無視され、紛争解決の役に立たないことが多いのが現状です。したがって総会がやっていることは、議論をして決議を通すことだけであり、何の権威もないという現実があります。一方で安全保障理事会は5カ国の常任理事国と10カ国の非常任理事国で構成されていますが、その勧告には全加盟国が従わなければなりません。無視すると、非軍事制裁措置の後に、軍事行動をも発動することができる強力な権限を安保理は持っているのです。したがって国連で一番力のある組織は安全保障理事会ということになるのですが、この安保理もまた、機能不全に陥ってしまうわけです。

なぜそうなったかというと、例の「拒否権」を認めたからということになります。5カ国のうち1カ国でも反対すると決議が通らないのです。では、これまでにどの国が最も多く拒否権を使ってきたのかというと、ソ連とその後継者であるロシアがトップであり、全部で127回になります。このうち106回までが1965年以前に発動したということですから、冷戦が激しかったころにソ連は拒否権を乱発していたということになります。その次がアメリカで83回ですから、結局はアメリカとソ連がお互いの国益にかなわないものはどんどん拒否していったので、この拒否権によって安保理は機能しなくなってしまったのです。

これまで述べてきたように、国連は第二次世界大戦の結果としてできたものであり、その戦争の過程と大きな関係があります。第二次世界大戦において日本が戦った主要な国はアメリカでありますが、より正確に言うと「連合国」ということになります。この連合国の名前を“The United Nations”といいました。この名前が実はそのまま国連の名前になったのです。この連合国の中心的な国がアメリカ、イギリス、フランス、中国、ソ連であり、この5カ国が後に国連の安全保障理事会の常任理事国になっていったのです。しかし、この「中国」の部分が問題でありまして、日本が戦った「連合国の中国」と「今の中国」は、実は違う国です。場所としては同じ中国なのですが、政権や国のあり方がまったく違うということです。

(つづく)

国連安保理、「拒否権」乱発で機能不全に

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