Voice

社会全体で子育て世代の支援を

教育の無償化は急務の課題


現在、わが国では子供の数が急減しているだけでなく、生まれてきた子供の6人に一人が相対的な貧困状態にあります。少子化の最大の原因は若者の非婚化・晩婚化で、その背景の一つに経済問題があります。子育て世帯への経済支援は急務の課題と言ってよいでしょう。

日本の社会保障制度は積立方式ではなく賦課方式で、現役世代が全ての高齢者を養う仕組みです。生涯独身だった人も、子供のいない人もすべて、高齢になれば他の人が育てた子供のお世話になるのです。

教育費は、子育て世帯にとって大きな経済的負担となっています。それが少子化の一因となっており、独身や子供のあるなしに関わらず、いずれお世話になる子供たちの教育費を全世帯で支え合うのは当然ではないでしょうか。

こうした中、自民党は安倍首相(自民党総裁)が2020年の憲法改正を目指す考えを表明したことを受け、年内に党としての改正案をとりまとめることにしました。改正項目の一つに、幼児から大学などの高等教育の授業料無償化があります。

また自民党の教育再生実行本部は、大学などに在学している間は授業料を無償化し(国が授業料を立て替え、一部を負担)、卒業後に一定の年収を超えた場合に、収入に応じて国に納付する新たな制度の創設を提言する方針を固めました。親の年収に関係なく高等教育を受ける機会を保証する狙いです。高等教育の無償化は、今回の提言では見送られました。

さらに、自民党の小泉進次郎・農林部会長ら若手議員による「2020年以降の経済財政構想小委員会」は、保育や幼児教育を事実上無料化とするため「こども保険」の創設を提言しています。厚生年金や国民年金の保険料に上乗せする形で、勤労者や企業から幅広く徴収し、社会全体で子育て世帯を支援しようというものです。

こども保険は「教育国債」に対する対案としての意味合いがある一方、税金では反発が強いため、「保険料」ということで徴収しようというものです。こども保険には、「保険」といいながらリスクが不明である、負担者と受益者が一致しない、高齢者が負担から排除されている等の問題も指摘されています。

日本は先進国の中では高等教育への公的支出が極端に少なく、少子化対策としても高等教育の無償化は急務の課題です。教育は未来への投資ですから、「教育国債」で賄うことも一案でしょう。ゆくゆくは相続税の課税ベース拡大や所得税の累進化など税制改革が不可避です。(N)

※「ファミリープロミス・メールマガジン」2017年5月20日 No.313より

Photo by K.H

社会全体で子育て世代の支援を

新着記事

  1. 世界思想Vol.61

PAGE TOP