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新内閣発足 求められる明確な国家像

コロナ対応、経済再生、安保強化

自民党の岸田文雄総裁が10月4日、国会で第100代首相に選出されました。衆院選については10月19日に公示、31日に投開票の日程で行うことを決めました。

同日夜に記者会見に臨んだ岸田氏は、政権を「新時代共創内閣」と名付け、「私が目指すのは新しい資本主義の実現だ」と述べました。また、経済政策の柱に「成長と分配の好循環」を掲げました。会見ではこのほか、コロナ禍で生活が苦しい「弱い立場の方々に個別に現金給付を行うこと」も検討するとしました。

岸田氏は「アベノミクス」の金融緩和、財政出動、成長戦略の「3本の矢」は堅持する方針です。しかし、アベノミクスには恩恵が大企業や富裕層らに限られ、低所得層や中小企業に波及する「トリクルダウン」が不十分だったとの問題点がありました。そこで、中小企業や子育て世帯ら中間層への分配を手厚くする修正を加えることで「岸田カラー」を打ち出し、消費を盛り上げ、新たな成長につなげることを狙うこととしています。新政権はこれに向けた具体的な戦略をどのように作り、実行に移していくかが課題となります。

また、新型コロナウイルスの影響が長期化する中、深刻な打撃を受ける個人や事業者に対して切れ目ない支援を行うとともに、感染再拡大を防ぎながら社会経済活動を再開し、一日も早く正常化させることも引き続き重要な課題となるでしょう。

首相は喫緊の課題である新型コロナウイルス対策については、ワクチン接種や医療提供体制の強化を図るとしました。緊急事態宣言が解除されましたが、「第6波」到来が懸念されています。感染者数が落ち着いているうちに、病床の整備など医療提供体制を拡充しなければなりません。

閣僚や自民党執行部の人事については、派閥の均衡をとりつつ当選3回の若手を3人抜擢するなど、20人中13人が初入閣しました。

岸田氏は中国を念頭に経済安全保障担当相を新設し、この問題に取り組んできた小林鷹之元防衛政務官(46)が起用されました。技術・情報流出に対する危機感や、半導体など戦略物資を確保していく重要性が増すなか、日本の成長と安全保障を確かなものにしていかなければなりません。

外交・安全保障では、経済や軍事力の面でも急速に成長する中国とどう向き合っていくかが大きな課題となっています。岸田氏は茂木外相と岸防衛相を再任し、外交・安全保障政策の継続性を重視しました。日米同盟を基軸にし、民主主義などの普遍的価値を共有する国々とのさらなる連携が求められています。

菅義偉前首相が就任から1年で退陣した理由として、政権が新型コロナウイルス対応をする際の発信力、説明力不足が挙げられ、コロナ禍の出口への道筋を示せない菅政権に国民の不満が高まっていました。

新政権は目指す国家像とそのための具体策を明確に示すことで、政治への信頼の高めることに注力してほしいと思います。

(H・S)

新内閣発足 求められる明確な国家像

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