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課題山積の今だからこそ「国家観」見据えた選択を

4年ぶり政権選択選挙と「野党共闘」

第49回衆議院議員選挙が10月19日に公示され、31日投開票の選挙戦がスタートしました。小選挙区と比例代表を合わせ、1051人が立候補。4年ぶりの政権選択選挙は衆院解散から投開票まで17日間という戦後最短の短期決戦で、計465議席(小選挙区289、比例代表176)を争います。

経済政策や新型コロナウイルス対応で与野党がアピールしているのは、ともに「所得の再分配」。いわば「分配 VS 分配」で争点が見えにくくなっています。具体策や財源の確保でグラデーションがあるものの、実効性についてはともに不透明と言わざるを得ません。

こうしたなか、自公連立与党との対立軸を打ち出そうと、野党がとった戦術は「野党共闘」。日本維新の会を除く立憲民主、共産、国民民主、社民の4野党は小選挙区289のうち、217で候補者一本化ができたと発表しました(れいわ新選組を含める一本化は213)。半数近くの132選挙区で事実上の与野党一騎打ちの構図となっています。

とりわけ注目を集めているのが、野党第一党の立民と共産の共闘です。共産は公示直前に22選挙区で候補を取り下げ、立民支援に回りました。

これに対し、与党は安全保障などの基本政策が異なる両党の候補一本化を、選挙目当ての「野合」と批判。自民党の甘利明幹事長は「政権選択選挙のもっと奥にある『体制選択選挙』だ」と位置づけました。

共産は「体制選択のような話を持ち込むのは全くの見当違いだ」「共産主義の思想を入れるなど、野党の共通政策で一言も触れていない」と憤慨し、立民も「政権をとっても(共産とは)限定的な閣外協力」などと反論に躍起ですが、閣内だろうが閣外だろうが共闘に変わりなく、両党の関係が一層強まったことは間違いありません。

そもそも政権選択選挙である以上、それぞれの政党が打ち出す公約は確固たる国家観に基づかなければならず、その点も含めた国民の賛同が必要です。

その国家観を見極める上で参考となるのは、「有事」への備えでしょう。例えば、コロナなどの感染症や自然災害、人口減少問題などと並んで有事と言えるのは日本の安全保障に関する問題です。

東アジアの安保環境は厳しさを増しています。とりわけ軍事、経済両面で台頭する中国の覇権的な行動を抑制し、自由で開かれた国際秩序をどう維持するのか、日本が担うべき役割は大きいといえます。

習近平国家主席は10月9日、辛亥革命から110年を記念する式典で演説し、「台湾統一は必ず実現する」と自信を示し、香港などの「1国2制度」を台湾にも導入すると宣言しました。

中国の軍事的脅威が強まるなか、日米安全保障条約の廃棄をめざす共産と立民との間には外交・安保観で大きな距離があります。

野党候補一本化の問題点は、国民の歓心を買うために、政策実現性は低くても、とりあえず耳障りのいい政策を並べておこうという傾向が強まることです。

山積する緊急課題に迅速かつ適切に対処するためには、どのような政権が望ましいのか。国家運営を担う政党・政治家の責任とは、こうした課題の全体を俯瞰し、大局的かつ将来的な視座を持って政策を立案、実行することです。財源や将来的な負担の問題をきちんと国民に示し、どういう国家像をめざすのか。政権選択選挙とはまさしく「国家観」選択選挙なのです。

(T)

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