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国の総力を挙げて人口政策・家族政策を

国家の存立を脅かす人口減少の危機


厚労省が今月発表した人口動態推計によれば、2016年の出生数は前年より3万人近く減少し、統計開始(1899年)以来、初めて100万人を切りました(97万6979人)。

これは、これまでの少子化傾向で出産適齢期(20代から30代)の女性人口自体が減少しているのに加えて、晩婚化・晩産化が進行し続けているためです。このままだと少子化による人口減少が加速度的に進み、将来の社会保障基盤を揺るがすとともに、経済規模の縮小や自治体の機能不全を招くことになります。

内閣府による最悪のシナリオでは、日本の人口は2050年には現在より4000万人減少し、8000万人台に突入します。しかも、そのうち4割(3000万人以上)は65歳以上の高齢者で、現役世代は4000万人余りしかいません。

専門家による試算によれば、現在と同じ年金水準を維持しようとすれば、2050年時点で、少なくとも現役世代の負担は今の1・7倍。また、年金だけでなく、現在のような医療保険、介護保険などの社会保障制度を2050年まで維持しようとすれば、現役世代は収入の9割を税金として納めなければならないというのです。

また国立社会保障・人口問題研究所は、2010年に比べて2040年の人口がどれくらい減少するか、全国すべての市町村について人口推移を予測しています。それによると全国各地を代表する観光地や都市で人口が3分の2、場合よっては半分の規模に縮小してしまうケースが少なくありません。大きな政令指定都市はなんとか持ちこたえるものの、地方の中核都市では人口減少が急激に進み、地域経済だけでなく、住民生活や行政サービスが立ち行かなってしまうのが目に見えています。

このように、少子化による人口減少は国家の存立を根底から脅かす内なる危機であり、政府が最優先に取り組むべき課題です。政府は「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の基本目標の一つとして、若い世代の結婚への支援を上げています。国としての結婚への公的応援は初めてのことで、若い世代が結婚しやすい環境づくりについて、各自治体に呼び掛けています。

政府が結婚支援に取り組みつつあるのは前進ですが、極めて不十分と言わざるをえません。国の総力を挙げて人口政策として少子化問題に取り組み、優先的に財源を確保すること。そして、婚姻制度を守りつつ、若者が結婚し子育てしやすいように支援する家族政策こそ、今求められています。(N)

※「ファミリープロミス・メールマガジン」2017年6月17日 No.317より

Photo by K.H

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