UPFの視点

中東平和の新たなパラダイムを求めて Vol.02

トランプ大統領の「エルサレム首都宣言」

text by 山崎喜博

本シリーズの第1回目で、イスラエル・パレスチナ紛争の性格は過去70年間に3通りの変容をしたことに触れた。すなわちパレスチナ解放運動は当初、主要アラブ諸国が後押しするアラブ民族主義の闘いだった。その後、冷戦激化に伴い、ソ連など共産圏が支援する民族解放闘争の一つになった。そしてソ連崩壊・冷戦後は、イスラム革命に成功したイランなどの支援を受ける、イスラムの大義、そして聖戦に格上げされた。宗教的性格を帯びるほど、政治レベルの妥協が難しく、闘いの手段も過激で生死を問題視しない自爆テロまで多用されてきた。

ところで中東紛争の宗教的性格を一番端的に示すのが、「エルサレム」をめぐる問題だ。この街がユダヤ教、キリスト教、イスラムという3つの一神教の伝統に深く関わる聖地・聖域であるからだ。その詳細は本稿では割愛するが、「エルサレム」には民族感情や信仰が関わるだけに、仮に他の政治的課題がほぼまとまりそうでも、「エルサレム問題」で双方の踏ん切りがつかず、御破算になるという場面が何度かあった。

そのため「エルサレム問題」は和平協議でも最後のテーマであり、よほど順調な状況で調整すべきものとみられてきた。ところが12月6日、米国のドナルド・トランプ大統領は突然、「エルサレムをイスラエルの首都と認定し、米国大使館をテルアビブからエルサレムに移転させるよう準備する」旨の発表をした。予想通り、パレスチナやアラブ諸国では激しい反発が上がり、仏独伊をはじめ欧州首脳や国連からも批判が相次いだ。

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トランプ大統領の「エルサレム首都宣言」

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