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母親からの虐待経験が「産後うつ」の一因に

「ゼロ歳児保育の弊害」との指摘も

子供の時に母親から頻繁に虐待を受けていた人は、そうでなかった人に比べて6.46倍も産後うつなど精神面での不調を引き起こしていることが、順天堂大学などのチームによる調査で分かりました。

同チームが2001年から9年間、首都圏の産婦人科施設で出産した3814人を調べた結果、分かったものです。虐待が時々でも、産後うつなど精神的不調に陥る割合は2.64倍高くなっています。父親からの虐待の有無ではほぼ差は見られなかったことから、母子間の虐待がより重大な影響を及ぼしていることが分かります。

現在、産後うつが増えていると言われていますが、それは密室での子育ての大変さなどに起因していると一般に考えられています。しかし専門家によれば、本来女性は子育てを楽しめる能力持っており、健康な女性にとって、子育ては唯一母親が独占できる、お金では代えられない世界だといいます。

子育ての大変さ自体が産後うつの原因なのではなく、幼少期に母親との関係で、一対一の安定した、安心できる基本的信頼感を構築できなかったこと。自分と母親との関係が心の中でトラウマになっているところに問題の根源があるというのです。

「自分は母親から大切にしてもらえなかったのに、なぜ自分はこの子のために自分の人生を犠牲にしなければならないのか」。子育てを通じて、そうした負の感情や怒りがこみ上げ、それがストレスとなってうつなどの精神的不調を引き起こすということです。

人間の赤ちゃんは、他の動物と違って極めて未熟な状態で生まれてきます。特に、ゼロ歳児のときは母親との一対一の関係の中で基本的信頼関係を築くことが何より大切で、それが人生の土台になります。ゼロ歳児から赤ちゃんを母親から引き離すことは「虐待」に匹敵する行為であると、専門家は指摘しています。

政府は待機児童ゼロの政策を推進していますが、それがゼロ歳児保育を推進するものであれば家庭の機能不全がますます進行し、母親と子供の両方を不幸にする結果を招きます。子供たちの将来のためにも、ゼロ歳児の子育て支援は在宅育児経済支援を中心にすべきなのです。

(N)

母親からの虐待経験が「産後うつ」の一因に

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