UPFの視点

中東平和の新たなパラダイムを求めて Vol.03

宗教の欠乏(?)が作る中東の葛藤

text by 山崎喜博

中東をめぐる「戦争と平和」の話題といえば長い間、イスラエルとパレスチナの土地をめぐる紛争、いわゆる中東紛争だった。しかし両者の最後の戦争、いわゆる「第4次中東戦争」(1973年)が石油ショックを引き起こして終わった後の40年近く、中東の安定や平和を揺さぶり続けてきた震源には、イスラムの2大宗派、スンニー派とシーア派の断裂線があった。その構造は中東全域を覆う「核戦争」、ひいては「第3次世界大戦」に至る可能性まで警告する識者が現れるほどだ。

ところで中東紛争では、パレスチナ=アラブ民族=イスラムvsイスラエル=ユダヤ民族=ユダヤ教という、いささか単純化された構図が持ち出され、同じ天地創造の神を信仰する一神教同士が闘っていることが指摘されてきた。今度は同じイスラムの伝統にある2つの宗派の緊張が中東情勢をここまで悪化させたことから、宗教が関与する政治の弊害が喧伝されている。しかし背景を探ってみれば、問題なのはむしろ宗教の力の欠乏だ。

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宗教の欠乏(?)が作る中東の葛藤

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