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晩婚・晩産がもたらす新たな“現実”

「育児」より「介護」が先 「30代で2割」の調査結果も


総務省は今月11日、2018年1月1日現在の「人口・人口動態および世帯数」を発表しました。日本の人口(外国人含む)は1億2770万7259人となり、前年比で19万9827人減少(0.16%減少)しました。初めて生産年齢人口(15〜64歳)比率が全体の6割を切り、15歳未満の年少人口比率も12.57%と過去最小を記録しました。

少子化の大きな要因の一つが晩婚・晩産であることはすでにご存知のことと思います。しかし、この晩婚・晩産によって人生設計に少なからぬ影響を与える「予期せぬ悩み」に直面する人が増えているようです。

ソニー生命保険がこのほど発表した調査結果によると、育児と介護に同時に直面する「ダブルケア」の経験者のうち、30代では育児より先に介護が始まった人が20%を占めることが分かりました。育児と介護が同時に始まった人も7%おり、出産や子育てよりも親の介護を先行させざるを得ないケースが増えています。

内閣府が2016年に行った試算では、ダブルケアを行う人は約25万人いると推計されていて、男女ともにその8割を30〜40代の働き盛りと言われる世代が占めています。ダブルケアを理由に業務量や労働時間を変更しなければならなかった人は女性で約4割、男性で約2割おり、中には「子供が保育園に入れない」「親が介護施設に入れない」「職場が両立しにくい環境」などの理由で仕事をやめざるを得ないケースも少なくないとみられています。

ソニー生命保険の調査では、現在ダブルケアをしている人を対象に介護や保育にかかる毎月の費用も質問。回答者の平均額は「子供の保育・教育関連費用」が3万8015円、「親の医療・介護関連費用」は2万3073円でした。

ダブルケアによって精神面や体力面に加え、経済的な負担が長期間続く場合もあるようで、働き盛りの世代に重くのしかかっています。

育児とは異なり、介護には先が見えません。介護業界の人手不足も深刻です。

働き盛り世代が教育と介護に大きな経済負担を強いられ、子供は家庭の中で心を通わせられる十分な学びを得られず、老父母は孫の世話をする機会が失われたまま身体の機能も衰えてしまう――。晩婚、晩産がそんな悪循環を助長しているのです。

3世代同居やルームシェアへの検討が叫ばれるとともに、テレワークの推進など柔軟な働き方に加えて、ダブルケアの人に保育園や介護施設への入所要件を緩和するなど、各種支援策の連携が求められています。

これと合わせて、特に20~30代の若者世代に対し、こうした現実を当事者意識をもって直視し、自らの人生設計を早めに立てるよう社会をあげて訴えなければなりません。言うまでもなく、結婚や出産に関わる選択は各人の意思です。しかし、そこから生じる課題を考えれば、国や行政をあげてさらに一歩踏み込んだ対応が必要ではないでしょうか。

そうでなければ、「1億総活躍時代」どころか「1億総ケア時代」になりかねません。

(S)

晩婚・晩産がもたらす新たな“現実”

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