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「ひとり暮らしの40代が日本を滅ぼす」の衝撃

NHK開発のAIが分析した日本の未来


NHKが日本社会の抱える様々な課題の解決を目指すAIを開発、話題になりました。人間では到底不可能な膨大なデータを分析し、それに基づいて人間が持つ感情や思想のバイアスを完全に払しょくしたユニークな提言をAIが行ったからです。

このAIで目指したのは、ある値(たとえば年齢の人口の増減)が変化することによって、他のデータの値(たとえば自殺率や貧困率)が連動してどのように変化するか、関係を可視化するというもの。5000種類に及ぶ47都道府県すべてのデータ30年分、合計700万件超のデータを学習したAIが生まれました。

AIが「日本の未来を動かす10のカギ」として挙げているのは、①核家族世帯数、②40代ひとり暮らし率、③病院数、④女子中学生の肥満指数、⑤平均婚姻年齢、⑥乗用車保有数、⑦「できちゃった婚」率、⑧平均寿命、⑨老衰死亡率者数、⑩婚姻件数――です。

日本の未来を動かす10のカギのうち、結婚・家族に関するものが半数も占めています。結婚・家族の在り方が日本の未来に決定的な影響を与えるということでしょう。

AIはいくつかユニークな提言を行っていますが、中でもショッキングなのは「40代ひとり暮らしが日本を滅ぼす」というものです。「40代ひとり暮らし」が増えると「自殺率」「餓死者数」「空き家数」「救急出動件数」などが増え、逆に「合計特殊出生率」「老人クラブ会員数」などが減少。全人口の1.9%にすぎない「40代ひとり暮らし」が、社会全体に極めて重大な負の影響を与えると分析しています。

わが国における生涯未婚率の推移をみると、1980年代では男性2.60%、女性4.45%とほとんどの人が普通に結婚していました。しかし、90年代以降、生涯未婚率は急上昇を続けており、最近の統計では男性の4人に一人、女性の7人に一人が生涯未婚となっています。このままでは「40代ひとり暮らし」も増え続け、日本を滅ぼす結果を招くことになります。

AIの分析によれば、40代ひとり暮らしの数(男性)に対して、一番強く連動しているのが「マンションやアパートの1坪あたり家賃」だそうです。家賃が下がれば生活に余裕ができ、結婚への障害が低くなって、ひとり暮らしの数を減らすと想定されています。

ちなみに、フランスではひとり暮らしを中心に全世帯の21%が家賃補助を受けています。オランダでは、全住宅の34%が「社会住宅」と呼ばれる公営住宅です。日本における公営住宅の割合は現状3.8%に過ぎません。

わが国でも少子化対策として、若者が家族形成(結婚)しやすい政策や、出産・子育て支援など「総合的な家族政策」が急務となっています。AIの分析は総合的な家族政策が少子化対策としてだけでなく、日本の滅亡を防ぎ明るい未来を築く上で決定的に重要な政策であることを示しています。(N)

Photo by K.I

「ひとり暮らしの40代が日本を滅ぼす」の衝撃

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