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真の女性活躍大国へ

「女性の社会進出」調査だけでは測れない男女平等


3月8日の国際女性デーを前後して、女性の社会進出の度合いを測るいくつかの統計が発表されました。1つは5日、列国議会同盟が発表した2018年度の各国議会(下院=日本では衆議院)の女性議員比率です。日本は女性の衆議院議員比率が10.2%(47人)で前年と同じでしたが、順位は7つ下げて193か国中165位でした。また、7日には、国際労働機関(ILO)が、世界の管理職に占める女性の割合(2018年)を27.1%と発表。ここでも日本は12%にとどまっており、G7の中で最下位でした。

この種の統計で最も頻繁に引用されるのは、世界経済フォーラム(WEF)のジェンダーギャップ指数ですが、この18年版(2018年12月18日発表)でも日本は149カ国中110位で、やはりG7中で最下位です。これらの数字をもって、わが国は「ジェンダー平等後進国」であるとの自己評価が定着しています。

一方、国連開発計画(UNDP)が発表するジェンダー不平等指数をみると、日本は世界189カ国中22位と欧州諸国とほぼ同等の好成績となっています。ちなみにお隣の韓国も、WEFでは115位ですが、UNDPの指数では10位となっています。

また、世界価値観調査を用いて男女の幸福度格差を調べると、日本は男性よりも女性の幸福度が高く、2010年には世界で最も「男性より女性の幸福度が高い国」(男性82.2%、女性90.4%)となっています。当然、ジェンダー平等先進国と言われるスウェーデンやフィンランドよりも上位です。内閣府による調査でも、日本は男性よりも女性の方が「幸せ」と答える比率が高くなっており、幸福度という視点で見ると、日本は、世界で最も女性が住みやすい国と評価できるかもしれません。

当然ながら、このように調査ごとの順位が変わるのは、調査する「項目」が異なるからです。細かく見ると、WEFのジェンダーギャップ指数で下位だった日本も、経済、教育、保健、政治の4項目のうち教育(識字率、進学率など)、保健(出生時の男女比、健康寿命)では世界トップの水準にあります。足を引っ張っているのは経済や政治分野、特に管理職や議員の割合の低さです。

指標でどんな項目を選ぶかは、価値観が大きく影響しています。女性が企業や政治の分野で活躍することに価値を置けば、当然、管理職比率や議員比率に高い比重が置かれるでしょう。戦後、国連に代表される国際機関を主導してきたのは北欧の社会民主主義サークルであったため、彼らの価値観を中心とした指標が国際社会で重きを置かれるようになりました。その意味ではスウェーデン、フィンランドなどがあらゆる指標で世界上位を占めるのは当然と言えば当然なのです。その一方で、子育てや家事に喜びを感じる専業主婦志向の女性が多い日本やイスラム圏のような国は、下位に位置づけられることになってしまいます。ちなみに、日本で最も幸福度が高い層は「専業主婦」です。

もちろん、政治や企業経営などの分野で、女性の活躍が望まれていることに疑いの余地はありません。東京医大などの入学試験で女性の点数が低く操作されていた事件など、わが国には依然、女性に対する社会的障壁が残っていることも確かです。一方で、女性の社会進出が進んだ欧米社会では、婚外子比率や離婚率が非常に高い水準となっており、家庭や地域共同体が空洞化することで、孤独に苦しむ人々が増えています。

その意味では、経済、政治分野に偏らず、家庭や地域社会で充実した生活を送る女性の活躍も測ることができる指標が必要かもしれません。

(O)

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