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「焦る」北朝鮮に日米は毅然とした対応を

またも「飛翔体」発射 国連決議違反も意に介さず?


北朝鮮は9日午後、短距離ミサイルと推定される飛翔体2発を発射しました。北朝鮮は先週4日にも、金正恩(キム・ジョンウン)委員長立ち会いで、複数のロケット砲と少なくとも1発の短距離ミサイルを東海岸から海に向けて発射したばかり。今回の発射は、米国のビーガン北朝鮮担当特別大使が韓国を訪問する中で実施されました。

米国は4日の発射を「不問」に付しましたが、北朝鮮は度合いを強めながら挑発を継続しています。2回目の発射後に記者団の質問を受けた米国のトランプ大統領は、飛翔体について分析中だとしながらも、発射されたのは「短距離ミサイルだった」と指摘。「彼らは交渉したがっているが、その準備が整っているとは思わない」と述べ、不快感を示しました。

前回の発射の際に、ポンペオ米国務長官は米国や日韓の安全に支障をきたすものではない、と意に介しませんでした。それにもかかわらず、またしても飛翔体を発射した北朝鮮。日米はその意図を読みあぐねているようです。

ただ、いずれにしても米国との交渉が行き詰まり状態のなか、今回の発射は北朝鮮が焦っている証拠だとも言えます。今回の北朝鮮の行動は、国連決議に違反して国際社会の反発を招いても、米国の脅威に繋がるICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射しないというトランプ氏との約束を破らないことで、国連は見限り、米国のみを交渉相手とする決意を示したかっこうです。

そしてその背景には、日米が主導した制裁が効いていることや、決裂に終わったハノイ米朝首脳会談後、中国、ロシアから冷たくあしらわれ、国内の政権基盤が危うくなる可能性が出はじめている事情があるとの指摘もあります。

北朝鮮は今後、大統領選が本格的に動き出す秋口に向けて、継続的にミサイルを発射し、外交的成果をあげたいトランプ氏から譲歩を引き出す考えとみられますが、今のところ米国は冷静です。

9日には、国連制裁に違反して北朝鮮から石炭を輸出していた同国船籍の運搬船を押収したと発表。国連制裁違反で北朝鮮船舶が押収されるのは初めてで、北の飛翔体発射後間もないタイミングで発表し、北朝鮮を揺さぶる狙いとみられています。

他方、日本は今回の発射を受けてもなお「安全保障に影響はない」(安倍首相)とコメントしていますが、北朝鮮に対し間違ったシグナルを送らないように注意しなければなりません。正恩氏が、制裁を主張してきた日本に対し、参院選を前に日朝首脳会談を実現し、拉致問題である程度の譲歩をちらつかせて対話ムードをつくるなどのシナリオを描いていたとしてもなんら不思議はありません。

北朝鮮の硬軟織り交ぜた瀬戸際外交を過去何度も見せつけられてきました。日米同盟が最重要である点に異論はありませんが、トランプ頼み一辺倒では日朝交渉の前進はおろか、かえって対話と圧力の圧力路線が弛緩し、北に利するような状況をつくりかねないことを肝に銘じるべきです。

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