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GAFAがもたらすのは恩恵? それとも弊害?

G20福岡で「デジタル課税」具体化に向けた議論がスタート


昨年来、欧州で議論されていたGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)のような巨大IT企業、いわゆるデジタル・プラットフォーマーに対する規制強化の動きが、日本を含め世界に広がってきました。彼らの独占・寡占状態が、取引企業や消費者個人にもたらす不利益や、プライバシー保護に配慮した動きです。

昨年末に経済産業省や公正取引委員会などが行った調査では、取引先や個人からの不平や不満が目立ちました。例えば、事業者に一方的な料金体系の大幅値上げや過大な手数料、理不尽なペナルティーなどの問題。また、個人では、アプリや閲覧記録などを通じて知らぬ間に個人情報を吸い上げられているプライバシーの問題や、SNSのフェイスブックで個人データの流出が発覚するなど、情報の取り扱いの不透明さも指摘されています。

これに加え、新たにプラットフォーマーに対する課税の議論も高まってきました。いわゆる「デジタル課税」の考え方です。

新たな課税の必要性が議論される背景には、企業が本社や支店、工場などの拠点を設けた国で得た所得(利益)に法人税を課すという従来のルールでは、そうした拠点を置かなくても、書籍や音楽のネット配信やネット広告など、オンライン上で国境を越えたサービスを行い、巨額の利益を上げることができる巨大IT企業などが適切に課税されず、他の企業と比べて不公平だ、との認識があります。

日経新聞などが報じているところでは、巨大IT企業に対するデジタル課税について、6月8、9日に福岡市で開かれる主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、2020年の合意をめざす基本方針が採択される見通しとなりました。具体的には、企業の本社機能がある国から、デジタルサービスなどの利用者がいる国により多くの税収を配分する方法などが検討されるようです。

グローバル化とIT技術の飛躍的な進歩が世界の経済構造を大きく変える一方、基本的な国際税制は1世紀前に開発されて以来、ほとんど変わっていませんでした。新たな課税方針が合意されれば、今後、実体のない本社を低税率国に置いて法人税を回避するような取り引きは次第にやりにくくなるでしょう。その意味で、福岡でのG20財務相会合は国際協調の歴史的な契機となる可能性があります。

デジタル課税の議論は今後、利益を計上する国で課税する原則から、利用者が多い国、すなわちその企業が利益を上げるのに貢献した消費者のいる国で税を課す流れに移行していくだろうと見る専門家もいます。

こうした動きに対し、情報技術の恩恵が行き届いていいない国や地域が残るなか、デジタルサービスの普及を遅らせる危険性があるとの声も上がっています。たしかに、情報技術のおかげで地球上の誰もが平等に情報にアクセスできるようになったことは事実です。貧しい農村や政情が不安定な危険地域で暮らす女性や子供がインターネット上で学ぶ機会を得ることができ、スマートフォンを使ってビジネスを起こすこともできるようになりました。

IT技術やデジタルサービスの普及がもたらす恩恵と、それを担う新たな経済圏が生み出す富の寡占状態。福岡でのG20が、こうした問題の両側面をしっかり見極め、単に国際税制に限らず、世界に恩恵をもたらす情報流通とプライバシーや安全のバランスも考慮した最適点を探求し、国際ルール・基準づくりに結実させていく出発点となるよう期待します。

(M)

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