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児童虐待の対応力をどう強化すべきか

児相と警察の連携、厚労省が実態調査


相次ぐ児童虐待事件で課題が指摘されている児童相談所(児相)と警察との連携について、厚生労働省が初の全国調査に乗り出すことになりました。札幌市中央区で池田詩梨(ことり)ちゃん(2)が衰弱死した事件で、児相と警察の連携に問題があったとの指摘があり、児童相談所と警察との間の人事交流についてや、どのような情報を共有しているかなど、実態把握を急ぎます。

政府は昨年7月に、虐待防止の緊急対策をまとめ、虐待による外傷や育児放棄(ネグレクト)、性的虐待などがあると考えられるケースは、児相と警察が情報共有を徹底し、立ち入り検査をする場合などは必要に応じて警察に援助を要請することをルール化していました。しかし、虐待死事件はなくならず、機能しているとは言えません。

札幌市の事件を巡っては、児相と警察にそれぞれ虐待を疑う通報が寄せられたものの、警察が母子との面会に向かった際に児相が同行せず、連携に問題があったことが明らかになっています。

市児相には昨年9月に住民から最初の通報があり、このときは職員が面会に訪れています。

しかし、その後も虐待は続いていたとみられ、「火が付いたように」泣き叫ぶ声や、何かにぶつかるような物音が続くことに、近隣住民がいたたまれなくなって市児相に連絡しています。しかし、市児相は電話連絡だけで問題なしと判断。目黒区の事件後、政府から全国に通知されていた「通告から48時間以内に安全確認する」とのルールも無視されていました。

虐待事件で加害者が責任を負うのは当然ですが、こうした悲惨な事件が起こるたびに児相、警察、学校など当局の不作為が繰り返し明らかになっている事実も看過できません。繰り返される悲劇に、この際、警察に対応を一本化し、児相は保護した後のケアに徹するべきだとの意見も出ています。大人が殺されそうになって大声を出していれば警察が動くのに、子供の泣き声だと動かないのはおかしいというわけです。

事態の緊急性や深刻さを考えると、警察権のような一定の公権力の行使を求める意見も理解できますが、体制を整備・再構築して、専門家を育成することもやはり必要だと思います。児相が言及している人手不足の現実も受け止めながら、教職員・PTAや自治体の世話役をしてきた主婦などの再登用も含め、関わる人数を増やす必要性も感じます。

家庭の体罰を禁止する法改正が近く成立見通しですが、法の実効性を保ち、子供を虐待から守るにはどうしたらいいのか。実態調査とともに体制整備に向けた主体的な取り組みを急がなければなりません。

(M)

児童虐待の対応力をどう強化すべきか

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