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夫婦、父母という言葉が消えてしまう?

LGBT・同性婚、参院選の隠れた争点


参議院議員選挙の投票日が迫ってきました。読売新聞の世論調査では、今回の参院選最大の争点は「年金」(41%)となっています。生産年齢人口が減り、高齢者の割合が人口の3割に迫るなか、多くの国民が老後の生活に関心をもつのは当然のことでしょう。ただし、年金問題がここまで深刻化した背景には「非婚・晩婚化」など結婚・家族文化の衰退があります。本来であれば、結婚や家族をどのように立て直していくのか、家族政策が争点としてクローズアップされるべきですが、表立って家庭再建を掲げる政治家、政党はなかなか見当たりません。

一方で、一夫一婦の婚姻制度をさらに弱体化させる恐れのある同性婚問題に対しては、一部の野党が積極的に推進する立場を明確にしており、慎重姿勢の自民党などとは対照的な姿勢を見せています。リベラル系メディアの『ハフポスト』(日本版)は7月4日時点の公約をもとに、同性婚への各党の立場を比較しています。それによると、同性婚賛成は立憲民主、共産、社会民主、維新。態度を明らかにしていないのは自民、公明、国民民主となっています。

賛成派のなかでも立憲民主党は、渋谷区同性パートナーシップ条例の適用カップル第1号となったレスビアンの増原裕子氏(現在は、当時のパートナーと関係を解消し、新たに勝間和代氏とパートナー関係にあることを公表)を京都選挙区で擁立。全国比例でもゲイの石川大我・前豊島区議が名簿に名を連ねています。(このほか「れいわ新選組」からトランスジェンダーの安富歩・東京大学教授が立候補)。したがって、家族政策という点では、LGBT・同性婚に対する立場が一つの争点だと言えるでしょう。

LGBT・同性婚に対する立場を争点としてみた場合、注意すべきことは、これがいわゆる「人権問題」ではなく、婚姻・家族制度に対する価値観の対立だということです。それは、今年6月、立憲民主党、共産党、社会民主党の野党三党が衆議院に提出した同性婚合法化にむけた民法の一部改正案(通称:婚姻平等法案)の内容をみれば明らかです。

同法案では、①同性婚合法化②同性カップルに特別養子縁組を認める③「夫婦」「夫」「妻」を「婚姻の当事者」とし、「父母」「父」「母」を「親」に変更するなど、結婚・家族に関わる文言を性中立的なものに改正する――という3点が柱となっています。

②については、同性婚を認めている欧米諸国ですら子供を持つことは認めない国もあるなか、非常に急進的な内容だと言えるでしょう。③も同様です。米国でもオバマ政権時代に教育省が公文書の「父」「母」の欄を「親1」「親2」に変更したことが話題になりましたが、それを民法に明記しようというのですから、これはもう男女の区別や一夫一婦制度を根底から覆す「社会革命」と言わざるを得ません。

性的マイノリティに対する差別や人権侵害があれば解消するのは当然のことです。しかし、そのことと男女の区別に基づく社会制度や、一夫一婦の婚姻制度を相対化したり否定することとは、まったく次元の違う問題です。これらの過激なLGBT・同性婚運動は「性解放」や「ジェンダーフリー」といった、伝統的な性道徳や家族制度を否定する家庭破壊運動の延長線上に出てきたものです。結婚と家族を立て直すべき現代日本にあって、こうした一部野党の動きには警戒が必要です。

(O)

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