米中対立で揺れる国連と日本の役割

米中対立で揺れる国連と日本の役割 第8回

「5人の警察官」の1人となった中国

text by 魚谷俊輔

 

1971年の国連総会で中国の代表権の変更と台湾の追放が決定しました。これを「アルバニア決議」といいます。なぜアルバニア決議かというと、アルバニアが20カ国を超える国々とともに共同議案国として決議を提案したからです。これは表向きはアルバニアが提案したことになっていますが、実際には周恩来が書いたと言われています。

なぜアルバニアなのでしょうか? 現在はそうではないのですが、当時のアルバニアは1967年に無神論国家を宣言した共産主義国家でした。これが総会で決議されることになると、総会では中華民国もアメリカも拒否権を使えませんから、1971年10月25日に国連総会で賛成多数で採択されてしまいました。これにより、中華人民共和国が国連に加盟すると同時に、安保理の常任理事国ともなって、世界の大国の一つとして位置づけられることとなったのです。

安保理の常任理事国については、国連憲章の「第5章安全保障理事会」の第23条で規定されています。この国連憲章をウェブサイトで見てみると、いまでもこう書いてあります。

「安全保障理事会は、15の国際連合加盟国で構成する。中華民国、フランス、ソビエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国は安全保障理事会の常任理事国となる」。この部分は今でも改定されていないのです。しかし解釈によって、この「中華民国」の部分は「中華人民共和国」が継承したことになっており、ソビエト連邦の部分はロシアが継承したことになっているのです。

安全保障理事会の常任理事国になったということの意味は、中華人民共和国が世界の平和と安全を守る5人の警察官の1人として選ばれて、その役割を果たすことが期待されるようになったということです。ではこの中国という国は、世界の警察官としてふさわしい国なのかといえば、警察官というよりは、どちらかというと泥棒か強盗みたいなことをやってきた国なのです。

というのは、第二次世界大戦後も中国は武力による領土拡大を繰り返し行ってきたからです。これを地図に表示すると上のようになります。オレンジ色に見える部分が中華人民共和国のもともとの領土だったのですが、ここから武力によって領土を増やしていったということになります。モンゴル自治区、いま新疆ウイグル自治区と呼ばれる所、そしてチベットです。次回はウイグルの侵攻とチベットの侵攻についてだけ、簡単に説明をさせていただきます。

(つづく)

「5人の警察官」の1人となった中国

新着記事

  1. 世界思想Vol.61

PAGE TOP