360VIEW

リアル・アメリカ〜知られざる政治経済・社会・メディアのいま〜 Vol.79

トランプ政権の功績を傷つける陰謀論者の末路

text by 渡瀬裕哉

選挙投票・集計システム会社であるドミニオン社からトランプ弁護団の一員であったシドニー・パウエル弁護士が巨額の名誉棄損訴訟を起こされた。報道によると、日本で1300億円にも及ぶ莫大な賠償金の支払いが求められていると言う。

パウエル氏の主張は“スポーツ紙並み”

それに対して、パウエルの弁護団は「自分の主張は政治的な誇張に過ぎないので、まともな人なら信じないだろう」という主張で反論している状況だ。一見すると自らを信じた人々を愚弄する主張ではあるが、彼女がなりふり構わず賠償金の支払いを回避しようとしているのが良くわかる言い訳だ。

ちなみに、このような主張は日本でも過去に東京スポーツが「娯楽として陳腐なものだから真実である必要はない」という判決を得て勝訴したことがある。まさに、パウエルの主張は「東スポ並み」だということだ。

当のパウエル本人は、法廷内と法廷外で別人のように振る舞うことをやめておらず、依然として法廷では借りてきた猫のような文書を提出する一方、テレグラムなどのSNSでは強気の発言を続けて、彼女を妄信している支持者向けのパフォーマンスを継続している。

そのため、いまだに不正選挙陰謀論から目が覚めていない一部の支持者らはもはや誰からも相手にされなくなりつつある荒唐無稽な主張を繰り返している。これは控えめに言って、米国政治の未来を考えると大惨事そのものだ。

トランプ支持者=陰謀論者の空気を醸成

トランプ政権には他の政権と比べて遜色ない輝かしい実績がある。トランプ減税、規制改革、エネルギー輸出国化、米軍の再建、保守派の司法関係者任命、中東地域の安定化など、近年の共和党政権でも十分に実行できなかった成果を上げた。

しかし、現在の空気感は「トランプ政権を支持していた」と言うと、まるでその人物が陰謀論者かのように扱われる空気が醸成されてしまっている。その結果として、バイデン政権が推進しようとしている増税や規制強化などの脅威に警鐘を鳴らすことが難しくなってしまった左派は、パウエルらの保守派内の一部の愚かなデマゴーグの出鱈目(でたらめ)な言説を叩くことで、バイデンの正統性を強化するキャンペーンを行っているからだ。

デマ、フェイクの流布は結果的に自己の政治勢力の破壊に

パウエルが行ったことは、米国の共和党及び保守派の事実上の破壊であり、同党及び保守派はその勢力とイデオロギーの立て直しに膨大な手間と時間を費やすことになるだろう。

デマやフェイクニュースの流布は結果として自分達の政治勢力を破壊することになってしまう。米国の話ではあるが、我が国においても他山の石として肝に銘じるべきことだ。

(わたせ・ゆうや=国際情勢アナリスト)

この記事を購読するには、「オンライン会員」への登録手続きが必要です。
すでに登録がお済みの方は、ログインしてお読みください。

トランプ政権の功績を傷つける陰謀論者の末路

新着記事

  1. 世界思想Vol.61

PAGE TOP