米中対立で揺れる国連と日本の役割

米中対立で揺れる国連と日本の役割 第13回

中国支持が多数派を占める国連の現実

text by 魚谷俊輔

 

前回までは中国の「海洋進出」と歴史認識、「一帯一路」構想、中国によるWHO支配などについて説明しました。

実はWHOだけではなく、国連の15ある専門機関のうち、上記のように4つで中国人がトップを務めています。一目瞭然ではありますが、複数の機関でトップを輩出している国は中国の他にはありません。日本は各機関への拠出額では2位または3位なのですが、1つのポストも得ていないということになります。

それだけでなく、中国は昨年3月の世界知的所有権機関の事務局長選挙にも候補者を擁立しました。もしここが中国に取られたら大変なことになります。なぜかというと知的財産権侵害の常習犯が中国だからです。前評判では中国出身のワン・ビンインという女性が優勢だったのですが、さすがにそれはまずいだろうということで、日・欧・米が結託してシンガポールのダレン・ダン氏を推して当選させたわけですが、国際機関への中国の進出はめざましく、「時すでに遅し」という状況になっております。

国連において中国は「外交的勝利」というような状況を既に構築しています。例えば中国が昨年の夏、香港への政治的弾圧を強めると、国連人権理事会(UNHRC)では真っ向から対立する2つの文書が加盟国の間で出回りました。1つはキューバが策定した中国政府の動きを称賛するもので、53カ国が支持をしています。もう1つは懸念を表明したイギリス策定の文書なのですが、こちらは27カ国の支持にとどまりました。ですから香港であれだけひどいことが起きていながら、国連の中では中国の味方をする国の方が多いという現実があるのです。昨年3月には、「人権侵害に関する国連の特別報告者」というポストがあるのですが、それを選出するパネルで中国が委員の座を確保しました。この特別報告者はかつて、新疆ウイグル自治区における中国の人権問題を強烈に批判してきたポストなのですが、その選出にも中国が関われるようになってしまったということです。

(つづく)

中国支持が多数派を占める国連の現実

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