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幼児教育・保育の無償化 在宅育児支援とのバランスを

自民で本格的な議論がスタート


先の衆院選で自民党は、教育無償化や子育て支援を公約に掲げ大勝しました。政府は安倍内閣の看板政策である「人づくり革命」の実現に向けて、12月上旬にも教育無償化や子育て支援策を最終決定するようです。

新聞報道によれば、現在検討されているのは、①幼児教育・保育の無償化②待機児童解消に向けた保育の受け皿32万人分整備③大学などの高等教育無償化——などです。

幼児教育・保育の無償化については、3〜5歳児については幼稚園・保育園の費用を無料(認可外保育を含む)とする。0〜2歳児は低所得世帯(住民税の非課税世帯)に限って無料(認可外保育は対象外)とするようです。

高等教育では、低所得世帯の学生を対象に国立大学の授業料は原則無料。私立大学では国立大学との差額の半分ほどを上乗せする。同時に生活費支援として、返済のいらない給付型奨学金を大幅に拡充し、無償化の対象にならない一定の低所得層にも、給付額を段階的に減らす形で給付型奨学金を支給するようです。

なぜ社会全体で子育て支援する必要があるのでしょうか。日本の社会保障制度は積立方式ではなく賦課方式です。生涯独身の人、子供のいない人もすべて、高齢になれば子育て世帯が育てた子供たちにお世話になるのです。子供は社会全体の「宝」であり、資産なのです。

だとすれば、子育て世帯だけに養育の経済的負担をかけるのでなく、社会全体で子育て支援を行い、教育費を全世帯で支え合うのは当然です。少子化対策としても、安倍政権の進める教育無償化や子育て支援策を高く評価してよいでしょう。

ただし、子育て支援策に関していえば、保育支援に偏りすぎているという問題があります。国立社会保障・人口問題研究所の全国家庭動向調査によると、既婚女性の約8割は、乳幼児のうちは在宅育児を希望しています。多くの母親は経済的事情などにより、しかたなく保育所に子供を預けているのです。

ちなみに、児童1人当たりの月の保育費用(税金投入額)は、2歳児でおよそ19万円、1歳児21万円、0歳児では40万円余りにもなります。高コストの0歳児の費用を抑制していくためには、育児休業制度を徹底させるとともに、0〜2歳児までの在宅育児支援を充実させる必要があります。たとえば、所得制限を設けた上で月10万円程度の在宅育児支援等を行い、保育と在宅育児を選択できるようにする。その方が費用も安くて済むでしょう。

乳幼児のうちはできれば在宅で育児をしたいというお母さんたちの願いに応え、労働政策ではなく「家族政策」という視点で子供の育成と子育て支援を行う必要があります。それは幼い子供たち自身が望んでいる政策でもあるのです。(N)

幼児教育・保育の無償化 在宅育児支援とのバランスを

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