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中間団体の衰退と民主主義の劣化 ~ 岡山県PTA連合会が解散へ ~

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中間団体の衰退と民主主義の劣化 ~ 岡山県PTA連合会が解散へ ~

9月2日、PTAの岡山県連合会が2024年度末で解散するとの報道が流れた。都道府県の連合会が解散するのは全国で初めてのケースとなる。

ちなみに最近は「PTA不要論」などの声も聞こえてくるが、2022年9月、東京都PTA協議会が都内の公立小学校を対象に行った調査では、91.2%のPTAで加入率が90%を超えていた。教員不足でPTAの役割が期待される面もあり、まだまだその社会的意義は大きい。

ただし、共働き家庭も増える中で負担感は高まってきており、まだまだ少数ながら、市区町村の連合会や学校単位のPTAでも解散する所が出てきている。戦後、GHQ主導で設置が推進されたPTAだが、人口減少や家族構成等の変化を受けて、曲がり角を迎えているのは確かなようだ。

中間団体の担い手不足が深刻化

PTAのみならず、住民主導の他の中間団体に関しても、組織や活動の維持に苦心する傾向が見て取れる。

地域の防災活動の中核となる消防団員数は2013年の86万9千人から23年には76万3千人と10年間で10万人以上減少した。特にここ2、3年は毎年約2万人も減少している(「令和5年消防白書」)。

また、高齢者人口が増える一方で、老人クラブはクラブ数・会員数共に低落傾向だ。1999年にはクラブ数13万4千、会員数886万9千人を数えたが、2022年度末にはそれぞれ8万2千、405万3千人(「令和4年度福祉行政報告例の概況」)まで落ち込んでいる。

自治会等の加入率も、2010年の78%から20年には71.7%に低下。特に人口50万以上の都市では約6割にとどまっている。役員の高齢化、固定化も課題だ。

民主主義の劣化にもつながる

こうした中間団体は、それぞれが担っている固有の機能に加え、住民自治の担い手を育てる人材育成・輩出の機能も果たしてきた。実際にPTA、消防団、自治会等の活動に参加して役員などを務めることで、統治のプロセスの単なる「受益者」ではなく、「担い手」としての経験を積むことになり、行政との連携・協働を通じて、「傍観者」から脱却し、内側からの視点を持てるようになる。もちろん、住民同士の信頼関係、連帯感の醸成にも役立つ。

逆にそれらが衰退すれば、住民の自治意識は希薄になり、無責任な批判や要求が横行し、民主主義は衆愚政治に堕落して、やがては全体主義的な独裁を求めるようになる危険も孕む。

核家族化、共働きの増加で、地域社会から担い手が消えた。それは民主主義の劣化にもつながる深刻な危機なのである。

※世界思想2024年10月号『談論風発』より

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