世界思想

世界を覆う民主主義の危機

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世界を覆う民主主義の危機

2025年新春を迎えました。平和大使の皆様をはじめとした多くの方々のご支援により、UPFは国の内外で大きく発展することができました。心から御礼を申し上げます。

世界は今、厳しい混迷期に入ったように感じられます。ロシアによるウクライナ攻撃、中東における紛争、ヨーロッパの政治的混乱など、深刻な状況を数多く見ることができます。さらには、国内外でさまざまな格差による問題が社会を分断しています。このような状況下で、民主主義世界が後退しています。今こそ、民主主義の原理やその根幹となる価値観を再確認する必要があると考えます。

民主主義の対極にあるのが、一部の階層が支配する貴族制や寡頭(かとう)制、さらには一人が支配するという権威主義政体や独裁体制ということになります。これらを否定したのが民主主義です。それはとても複雑なシステムであり、完璧な統治制度とはいえませんが、人類の生み出した制度としては、現状、最もよくできたものであると言えましょう。簡単に言えば、民主主義とは文字通り「民衆が主人・主体」という考え方であり、人民、大衆、民衆が主権を持ち、政治的決定をするということです。要するに、権力や支配力を一人(あるいは一部の人々)が持つか民衆が持つかという問題です。

古代ギリシャの直接民主制はよく知られていますが、社会の構成員が比較的少数であれば可能であったその制度も、人口が増え多民族化するにつれ、その維持も簡単ではなくなり、やがて代議員を選ぶことになりました。今日の選挙制度を伴った民主主義がそれであります。ヨーロッパの歴史をひもとけば、民主主義の発展に関して、さまざまな背景を見ることができます。

それはさておき、民主主義を簡単にまとめると次のようになるでしょう。すなわち、①国民が政府に意見を述べる機会、すなわち選挙や市民活動が必要②憲法を定め、政府の権力を制限し、法の支配を定める③多数決の原則を維持する④多数決で決定される一方、少数者の存在や権利も保障される⑤思想・信条の自由を侵してはならない⑥民衆が主体的に決定するための情報や理念などを得る上で言論の自由が保障されなければならない⑦不正を防ぐために、政府は常に国民に説明責任を果たすことが求められる――などです。

これらの中で、最も基礎となるのは言論の問題でありましょう。民衆が主体的に判断し決定するためには、政府や言論機関から全ての人々に対し、公正、公平な情報が伝達されなければなりません。そうでなければ、国民は誤導され衆愚政治に陥ってしまいます。そして、政府が説明責任を果たさない場合は政府の横暴が日常化し、不正が蔓延することとなるのです。

このように、立法、司法、行政の3権とともに第4権力とよばれる言論機関が機能しなければ、民主主義そのものが危機的状況に陥ることになります。

昨年11月の兵庫県知事選では、ご存知のように既成のメディアが有権者の挑戦を受ける歴史的にも重要な選挙となりました。前知事に関するマスコミの批判的な報道に多くの有権者が「偏向だ」と拒否感を示し、新聞やテレビといったオールド・メディアの報道よりSNSに判断材料を求めたのです。もちろん、SNSの情報の信頼性には議論の余地があるでしょうが、人々は受動的なテレビ報道を鵜呑みにするより、能動的に自ら情報を求め、それを信じたことになります。

振り返れば、2022年に起こった安倍晋三元首相殺害事件後の、世界平和統一家庭連合(家庭連合)に対するマスコミの攻撃は津波の如くであり、あまりに過剰で偏向した内容で、日本全国の家庭連合会員とその関係者に多くの差別や被害を生みました。

また、家庭連合への解散命令請求を発出した岸田文雄前政権についても、その根拠について十分に説明責任を果たしたとは言えないと指摘されています。岸田氏の恣意的な解釈と運用により、少数者の権利が保護されたとは言えない状況が数多く発生し、家庭連合会員も大きな不利益を被ったのです。

こうした事実から、日本の民主主義が危機的状況であるとする主張は正鵠(せいこく)を射ていると言えましょう。民主主義は多様な人々と考えを内包していかなければならないので、自らと異なる意見に対して寛容であり、彼らの意見の表明は保障されなければなりません。

しかし、いつの頃からか、日本社会から寛容さや隣人や他者の意見に耳を傾ける謙虚さが失われてしまったようです。多様性と多文化、多民族社会に変容しようとしている国際社会の中で、日本で今後、世界からの様々な信仰や理念と間で葛藤が生まれることは容易に想像できます。

このまま社会が寛容性を失えば、日本の未来はどうなるのでしょうか。明らかに、日本の民主主義の発展のためにはならない状況と言えましょう。

民主主義と信教の自由に関して語りたいことはたくさんありますが、続きはまた次回以降に述べたいと思います。

UPFの創設者である文鮮明総裁は、「過激な個人主義により民主主義が崩壊していくと人々は君主主義や独裁主義を求めるようになる」と警告されました。1971年のことです。現在の世界は、師の予見された悪い方向に進んでいるようにも見えます。

本年の皆様のご健闘とご活躍をお祈りいたします。

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