世界思想

宗教と科学|「 宗教的叡智」と「科学的知性」が融合した新文明へ

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宗教と科学|「 宗教的叡智」と「科学的知性」が融合した新文明へ

「人間は有史以来今日に至るまで、休むことなく、無知から知へと、無知を克服しようとして真理を探し求めてきた。その際、内的無知を克服して内的知に至る道を見いだすべく内的真理を探求してきたのがすなわち宗教であり、外的無知を克服して外的知への道を見いだすべく外的真理を探求してきたのが科学なのである」

UPFの友好団体、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の教理解説書『原理講論』には、宗教と科学がこう位置付けられている。昨年(2022年)来、宗教に大きな注目が集まっているが、宗教と科学の関係について考えてみたい。

理論物理学者でカトリックの聖職者でもある三田一郎氏は、2018年に出版された『科学者はなぜ神を信じるのか』の冒頭、国連の調査をもとに「過去300年間に大きな業績をあげた世界中の科学者300人のうち、8割ないし9割が神を信じていた」と書いた。

同書にはコペルニクスやガリレオ、ニュートン、アインシュタイン等々、神を信じた(否定した)科学者とその研究がまとめられている。そのうちの1人、惑星の楕円軌道を発見したドイツの天文学者ケプラーは、「科学の最終目的は、人間を神に近づかせることである」と述べた。「科学の道を少し進むと神から離れるが、さらに究めればこれに回帰する」と語ったのは、「近代細菌学の開祖」で、フランスの生化学者ルイ・パストゥールだ(同書には登場しない)。

三田氏は「科学法則の創造者を『神』と定義」し、「ルール(科学法則)が存在するということは、その創造者である神が存在するということだ」と、科学者として信仰告白する。さらに「科学者とは、自然に対して最も謙虚な者であるべきであり、そのことと神を信じる姿勢とは、まったく矛盾しない」と訴える。

「死」と向き合う科学者たち

同じく科学者で、原子力工学の博士号を持つ田坂広志の著書『死は存在しない』は、昨年(2022年)10月末の出版以来、「発売3ヶ月で15万部突破!」と、宗教的なテーマとしては異例のベストセラーとなっている。「唯物論的思想」を持ち、「死後の世界」など存在しないと考えていた田坂氏は、様々な「不思議な体験」を通じて考えを改めていく。そんな田坂氏が最先端量子化学の“ある仮説”をもとに、人間の「意識」や「死」を深く掘り下げたのが同書だ。田坂氏は「ダーウィニズム(進化思想)の限界」を指摘し、現代の科学についても次のように主張する。「我々は、現代の科学の主張を無条件に信じ込み、『現代の科学が否定しているのだから、神秘的な現象や死後の世界は存在しない』という固定概念は、一度、取り去って、まずは、虚心に、我々の生きているこの世界を見つめてみる必要があるだろう」。

全米で200万部超の大ベストセラーとなった『プルーフ・オブ・ヘヴン』は、2013年に邦訳が出版された。米国の脳神経外科医として25年以上のキャリアがあるエベン・アレグザンダー氏が、自身の「臨死体験」を克明に記録した書だ。少し長いが同氏の科学に対する見解を引用したい。

「私が人生の大部分を捧げてきた科学はーーあちら側(死後)の世界で気付かされたことに矛盾しない。だが多くの人々、じつに多くの人々が矛盾すると思い込んでいる。唯物論的世界観に忠実な科学界の一部が、科学と霊的側面とは共存し得ないと繰り返し主張し続けてきたからである。それは間違っている。この本を上梓する目的は、古代からの最終的に基本的な事実を広く知ってもらうことである

彼は、「脳や肉体が死んでしまっても意識は消滅せず、人間は死を超えて経験を継続していくこと」「そのような意識には、個々人とこの宇宙にあるもの全体に目を配り、行方を見守り続ける神の眼差しが注がれている」とまで証言している。

科学と宗教が融合する21世紀

田坂氏の前掲書にアレグザンダー氏に関する言及はないが、国や立場を超えた2人が、同様の主張をしていることに気づくだろう。田坂氏は同書の最後で、「この21世紀、我々人類が成し遂げるべきことがある。/それが、『科学』と『宗教』の融合であり、『科学的知性』と『宗教的叡智』が結びついた『新たな文明』の想像であろう」と、高らかに宣言する。

「宗教」に対する人々の意識や価値観を確認する上で、2020年に國學院大学の研究機関が、大学生らを対象に実施した「第13回学生宗教意識調査」の結果が興味深い。「信仰をもっていないが、宗教に関心がある」が51.9%(「現在、信仰をもっている」のは10.7%)。「神の存在」「霊魂の存在」を「信じる」は、それぞれ20.2%、26.0%、「ありうると思う」が43.7%、45.3%に達した。

さらに「どんなに科学が発達しても、宗教は人間に必要だ」との設問に、「そう思う」が31.9%、「どちらかといればそう思う」が45.3%と、合わせて8割近くの大学生が、現代に置いても宗教の必要性や意義を認めた。

このような若者の意識に、宗教者はどのように応え、科学者と共にどのような“世界観”を提示することができるか。「『終わりの日』(終末=現代)になれば、神様を中心として宗教と科学と思想が1つにならなければなりません」。UPF創設者・文鮮明総裁の言葉を、今一度心に刻みたい。

世界思想2023年4月号「今月の1テーマ」より

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