急速に弱体化する家族のケア機能
急速に弱体化する家族のケア機能~外部からの支援拡大には限界も~
7月5日、厚生労働省が2023(令和5)年国民生活基礎調査の結果を公表した。
最も多い世帯構造「単独世帯」で全体の34.0%を占め、「夫婦と未婚の子のみの世帯」は24.8%まで落ち込んだ。約40年前の1986年には単独世帯が18.2%、夫婦と子の世帯が41.4%だったが、昭和から令和に、日本社会における家族の形は急激に変化している。同じ期間に、三世代世帯も15.3%から3.8%に激減した。
家族機能の弱体化をいかに補うか
65歳以上の高齢者がいる世帯は全世帯の49.5%。そのうち約6割が単独世帯(31.7%)と夫婦のみの世帯(32.0%)である。未婚の子を含む世帯(20.2%)、三世代世帯(7.0%)は非常に少ない。約3分の2が高齢者のみで暮らしており、今後は、こうした世帯の介護が大きな課題となる。
子育てについても、支援してくれる祖父母世代が同居、近居しているかどうかで、現役世代にかかる負担は大きく異なる。世帯人数の縮小は、高齢者のケアや子育てなど、家族機能の弱体化を意味するのだ。
菅政権時代に、「自助、共助、公助」の枠組みが示されたが、家族・親族、地域のつながりが残っていた1980年代ならいざ知らず、今後はますます「公助」の役割が拡大していくだろう。いかに公的支や民間サービスで家族機能を補っていくかが、喫緊の政策課題となっている。
財源・人材の確保に課題
ただし、外部の支援には限界があることも十分認識されるべきだろう。高齢者介護や子育てなどの分野は、そもそも事業として成り立たせるのが難しい。自治体等の財源にも限りがあり、民間サービスも補助金なしでの運営は困難なことが多い。
さらに人口減少が進む中、官民問わず人材の確保が課題だ。教師、保育士、介護職員などは人材不足に悩んでいるが、採用基準を引き下げれば質の低下は避けられない。事故やトラブルも増えるだろう。
したがって、長期的には家族のケア機能そのものを再生する努力が欠かせない。
ケア機能を十分に果たせる家庭とは、言い換えれば、良き夫婦、親子関係を築いている家庭だ。しかしながら、「良い家庭を築く」というテーマは、戦前の「イエ」制度へのアレルギーもあり、わが国の戦後教育から排除されてきた歴史がある。
しかし、家族を取り巻く環境が厳しさを増す中で、子育てや親の介護等も視野に入れたライフプラン教育、円満な夫婦関係を築き、良き親になるための人格形成は、間違いなく最重要の課題となっている。
社会の基礎単位である「家庭」の再生に向けて、イデオロギー対立を超え、国民の総力を挙げて取り組む時ではないか。
※世界思想2024年9月号『談論風発』より