深刻化する欧州移民難民危機とUPFの役割
深刻化する欧州移民難民危機とUPFの役割
今日、国境を超えた人や物の移動が増加し、世界はますます一つになっています。一方でここ数年、ヨーロッパでは移民・難民の規制を求める声が拡大しています。先日もドイツの東部チューリンゲンとザクセンの両州議会議員選挙で、反移民政策を掲げる「ドイツのための選択肢(AfD)」が伸長しました。フランスでも同様の現象が見られます。北欧においてすら、同様の状況が見てとれます。「反移民」という政治的運動はヨーロッパのみならず、アメリカでも大きな問題となっています。これらの反移民政策を掲げる政党を「極右」などと呼ぶ日本のマスコミは、ヨーロッパの現状を理解していません。「極右」という表現は「極悪」なものを連想させますが、実態はそうではありません。
ヨーロッパで長年生活した経験から、私はこの移民・難民問題がいかに大きいかを実感してきました。フランスは広大な旧植民地からの移民の流入が激しく、そのことは同国のオリンピック選手にいかに移民が多いかをみても明らかです。ロンドンの街を歩く人の60%は観光客か移民だと友人に言われたものでした。ウィーンの公立学校では、イスラム家庭で生まれた子供がカトリック信者から生まれた子供を上回ったといいます。ドイツは戦前の反省から、移民に対して大変寛容な政策をとってきたため、多くの人々が中東やアフリカから流れ込んできました。現在、そうした移民や難民への福祉予算がドイツ政府と国民の大きな負担となっています。社会に馴染めなかったり経済的に困窮した移民による犯罪の増加なども、すでに放置できない状態にあります。
ヨーロッパ全体でキリスト教の信仰が減退する一方で、イスラム系移民は拡大を続けています。彼らの特徴は、その信仰心の篤さだけでなく、大変高い出生率です。イスラム系人口の増加は、従来の国家・国民のアイデンティティーが失われるかもしれないという恐怖をもたらすのです。
もはやこうした現象は、単なる「寛容政策」「多文化主義」という言葉だけでは管理できません。国境を極端に閉鎖すれば国家主義の危険性が生まれ、国境を急激に開けば、国内産業保護や社会的安定のバランスを失う危険性が高まります。国境の安全な管理と異なった信仰共同体との協調のバランスをどうとるのかが重大な課題となっているのです。
UPFはユニバーサルピース、すなわち「普遍的平和」という難しい課題に挑戦している団体です。国境を維持しながらも、対話による相互理解の推進を求め、いかなる過激主義にも反対しています。また、移民や難民が生まれる状況を除去するための方策を提言しています。そのための役割は本来、国際連合が担うべきですが、残念ながら、現状は難しい状況です。私たちUPFが国連の改革を訴えている理由でもあります。
「世界思想」24年10月号 議長メッセージより