世界思想

家庭連合追及報道 | 客観的なデータで検証し、報道の役割 再考を

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家庭連合追及報道 | 客観的なデータで検証し、報道の役割 再考を

「統一教会追及報道は、『何が悪いのか』『それでどうなったのか』を欠いた政権追及報道だった」

安倍晋三元首相暗殺事件(2022年7月)以降の、家庭連合(旧統一教会)追及報道について、その本質を実に端的に言い表している。これを「データと証言で明らかに」したのが、2月末に出版された『検証暴走報道』(グッドタイム出版)である。

著者の加藤文宏氏は、これまでに「論壇誌やWEBメディアに情報災害とメディア問題を中心に論考を寄稿」してきた著述家だ。月刊「正論」2023年2月号でも、「ワイドショーが善悪を決めていいのか」と題して、日本テレビ系列のワイドショー「情報ライブ ミヤネ屋」の問題点などを解説していた。

加藤氏は新刊でも、ビッグデータの分析や「形態素解析」(学術研究や市場調査で用いられる分析手法)などを駆使しながら、「統一教会追及報道」をあくまでも「客観的なデータで検証」している。この点が加藤氏と本書の最大の強みであろう。

また本書では、「統一教会追及は自民党政権と政局を混乱させる政治運動であっただけでなく、統一教会の信者から人権を剥奪するほか、宗教法人の解散を目的とした社会運動でもあった」と、その本質をズバリ指摘。そして、その「社会運動が発動者たる『オピニオンリーダー・活動家・政治家』と『報道・SNS』と『不安や不満を抱えた追随層』の三つ巴(どもえ)構造によって始まり、暴走する」と、分かりやすく図示して解説する。

「統一教会を追及する社会運動」における「オピニオンリーダー・活動家・政治家」として、紀藤正樹弁護士や全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)、鈴木エイト氏、有田芳生氏の名前も挙げられている。家庭連合の会員でなくとも、納得感のある解説であろう。このような「三つ巴構造」「扇動の循環構造」によって、家庭連合追及報道は「暴走」したという。

そのうえで「報道が暴走して(家庭連合)信者への差別や、差別を容認する風潮をつくり出したのではないか。この風潮が解散命令請求に至った原因ではないか」と、加藤氏は問いかける。

ほぼ全ての週刊誌が教団に批判的な記事を掲載

筆者自身も、安倍元首相暗殺事件以降、家庭連合を取り上げた週刊誌をほぼ漏れなくチェックしてきた。次ページの表は、2022年7月から現在(2025年3月)まで、家庭連合に言及した週刊誌の記事の数とページ数を年単位で表で示したものだ。驚くべきことに、これらほぼ全ての記事が、家庭連合に極めて批判的な内容であった。

週刊誌を購読するのは一部の層に限られるが、各記事は、各社のWEBメディアや「Yahoo! ニュース」などのニュースサイトにも転載され、多くの国民の目にするところとなる。

週刊誌特有のセンセーショナルな内容に、影響を受けた国民も決して少なくないだろう。もちろん、週刊誌による「報道・SNS」にも、「オピニオンリーダー」である紀藤弁護士や全国弁連(の弁護士たち)、鈴木エイト氏、有田氏らが度々登場しコメントしてきたのは言うまでもない。

「報道の鉄則」を無視するメディア

加藤文宏 著「検証 暴走報道」

加藤氏は『検証暴走報道』で、「統一教会追及報道」が「『事実通りに伝える』『報道する側の意見を含めない』『意見が分かれる場合は片側の意見に偏らず報道する』とされる鉄則のいずれか、またはすべてを無視していた」と批判する。

「事実に基づき真実を探求する」という「報道の鉄則」が、家庭連合に対しては守られたのか。2023年月に出版された『潜入旧統一教会』(徳間書店)で、著者の窪田順生(まさき)氏はこう訴えた。「この1年以上も巷を騒がしてきた『旧統一教会報道』というのは、教団に騙されていたと被害を訴える元信者、そして身内の入信を快く思っていない家族という『被害者』にだけ取材をしてつくられたもので、私のように教団側の言い分を詳しく聞いていないのである。言うなれば『被害者バイアス』の極めて強い影響を受けた『偏向報道』だということだ」

「言論は真理の代弁者であり、良心でなければならない」。2022年月11月号の本欄で「家庭連合への批判報道」を取り上げた際にも紹介した、UPF創設者・韓鶴子総裁の言葉だ。当時から現在も、日本の報道や言論が「社会における良心としての役割」を果たしてきたとは言い難い。このたびの加藤氏の著書出版が、報道機関に「反省」を促す機会になることを願ってやまない。

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