#159 学術会議法人化で一歩前進 〜 自民の別姓法案見送りも評価 〜
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#159
学術会議法人化で一歩前進 〜 自民の別姓法案見送りも評価 〜

6月22日の通常国会閉幕まで残すところ約1カ月となった。都議選の告示日は6月13日、投開票日は22日で、その後には参院選が控えている。各党みな選挙を意識し消費税減税や補正予算案の作成などを訴えている。
「共産党を非難すれば統一教会と同じだ」
そんな中、具体的に評価できる動きが2つあった。1つは、日本学術会議を「国の特別機関」から特殊法人に移行するための関連法案が衆院で可決されたこと。もう1つは、自民党が選択的夫婦別姓制度の独自法案の今国会提出を見送り、野党提出の別姓関連法案の成立も困難視されるようになったことだ。
「学術会議は会員の選考が公選制から推薦制になった1984年から、日本共産党が党に近い学者を送り込み続け影響力を拡大してきた。事実上の共産党の別動隊との指摘もある。現会員が候補者を推薦し、首相が形式的に任命してきたためだ。税金で給料を受け取りながら国の政策、特に安全保障政策などを批判し、そこから一線を引いたり、ストップを掛けるフロント組織として存在してきた弊害は大きい」とマスコミ関係者は指摘する。学術会議が法人化されれば、選考の透明性が確保される。
共産党が猛烈に批判したのは当然だ。田村智子委員長は8日の記者会見で「政治的思惑によって学術会議の解体を狙う暴挙を断じて認めることはできない。(日本学術会議関連法案の)廃案に向けて全力で取り組む」と強調。13日の衆院本会議では、法案の採決に先立ち、共産の塩川鉄也議員が会議の存在意義に言及。一方で、「わが党に対する発言は事実をゆがめた暴言で断じて認めることはできない。その暴言は統一教会の主張を丸写ししたものだ」と非難した。
これに対し法案の賛成討論をした日本維新の会の三木圭恵議員は、「共産党を非難すれば統一教会と同じだと一生懸命レッテル貼りする姿は怒りを通り越して気の毒とすら思うが、内容が真実と違うので痛くもかゆくもない」と反論。党機関誌「前衛」47号で宮本顕治氏(元委員長)が、学術会議に介入したことを党の成果として指摘したことを例に挙げながら、特定政党や外国勢力に影響されない政治的中立性を確保する必要性を訴えた。
法案は自民、公明、日本維新の会3党などの賛成多数で可決され、参院に送られた。これにより今国会での成立は確実となった。マスコミ関係者は「一歩前進であることは間違いない」としつつも、「国からの独立を主旨としながら12億円もの税金投入が続くのはおかしいので、さらなる改革が必要だろう」と強調した。
「野党共闘」の目論見外れた立憲
また、昨年の衆院選で与党を過半数割れに追い込んだ野党第一党の立憲民主党は、衆院法務委員会の委員長ポストを獲得。同委員会で選択的夫婦別姓制度を導入するための主導権を握って野党共闘を模索すると同時に、趣旨に賛成の公明党を取り込んで与党分裂を図り、自民内の分裂をも引き起こして同党の弱体化を図る狙いだった。そのため、立憲民主は4月30日、他党に先駆けて民法改正案を提出した。立憲が民法改正案としたのは、他党の賛同を得られやすいと判断したためだ。
ところが、賛成したのは共産党と社民党のみ。日本維新の会と国民民主党は独自法案を提出するとしたため、立憲の目論見が外れた。党委員会の定数は35。法案の可決には18以上の賛成が必要だ。しかし、立憲(11)に加え別姓推進派の公明(2)、国民民主(2)、共産(1)を合わせても16議席。しかも、公明は「別姓の趣旨には賛成だが、政府提案の法律で出すべきだ」との立場から立憲案に乗ることはない。また、14議席を占める自民も党内で賛否が割れ、「早急に結論を出すべきではない」との声が拡大。野党案に乗ることなく法務委員会で採決される際には党議拘束をかけるべきだとの認識で主要幹部は一致した。
「別姓導入法案は家族の一体感を損ねる原因になるのは目に見えている。今回の法案の見送りは評価したい。大平内閣の時、『家庭基盤の充実』により国難を克服しようと訴えたのと正反対の流れにはしっかりと対処していかなければならない」と自民党幹部はキッパリと話す。ただ、自民内に公然と別姓導入を主張する議員が増えているのも確か。「厳しい戦いが想定される参院選を意識し、党内の足並みの乱れや支持層の離反を懸念しての一過性の対処でなければいいのだが」と続けた。
(やまおか・ただし=政治ジャーナリスト)