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#148 米バイデン撤退、総裁選に影響

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ウォッチ!永田町〜ここがポイント国会情勢〜

米バイデン撤退、総裁選に影響〜岸田首相の交代論がさらに強まる〜

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text by 山岡忠志

やまおか・ただし=政治ジャーナリスト

9月の自民党総裁選に向けて、岸田文雄総裁(首相)の再選阻止に向けた動きが活発化する中、さらに首相の足を引っ張る情報が入ってきた。蜜月関係を築いてきた米国のバイデン大統領が7月21日、大統領選からの撤退を表明したのだ。

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「政権の命」だったバイデン氏の撤退

翌22日、岸田首相は官邸で記者団の取材に応じ、「バイデン大統領として政治的に最善の判断をするという思いでの判断だと認識している」と述べるとともに、「日米同盟はわが国の外交安全保障の基軸だ」とし「今後の動きについて注視していきたい」と語った。ありきたりのコメントだったが、表情は終始、暗く声に張りもなかった。

「岸田さんは、4月に国賓として訪米しホワイトハウスで晩餐会が催され、議会でも演説した。トランプ政権時代の安倍(晋三)元首相のような好待遇を受けた」と振り返る自民党幹部は「バイデン大統領こそが政権の命だった岸田首相には大きなショックだったに違いない」と続ける。

米民主党は8月の全国党大会で、バイデン大統領が支持し、指名に必要な過半数の代議員を確保したハリス副大統領を民主党の大統領候補に正式に指名する見通しだ。共和党のトランプ候補が勝つかハリス候補が勝つか最終的な勝利の行方は定かではないものの、「確トラ(確実にトランプ大統領が勝利する)」と言われるようになった今日の情勢は、一時的に世論調査での支持率の上下があっても、基本的に変わらないものと見られる。

「岸田首相では戦えない」

岸田首相は「日米同盟は外交の基軸」と繰り返すが、バイデン大統領の言うなりになって防衛費を増額し、LGBT理解増進法制定の旗振り役となって自らの政権基盤を固めてきたため、「トランプ相手の日米同盟となると極めてギクシャクしかねない。岸田さんで本当に大丈夫なのかとの声が強まるのは当然だろう」(政界関係者)。

バイデン大統領を撤退に追い込んだ背景には、トランプ氏と戦う「選挙の顔」になれないし、大統領選と同時に投開票される上下両院選にも悪影響が出てしまうことを警戒した身内の米連邦議会民主党から退陣要求が続出したことがある。それと似て、自民党内にも「支持率の低い岸田首相では次の解散総選挙や来年夏の参院選を戦えない」との声が噴出し、首相交代論が強まっているのだ。

最近、マスコミに登場して総裁選出馬の可能性を聞かれ、にんまりとしながら意欲を見せ始めているのが茂木敏充幹事長だ。少し前までは「首相を支える幹事長が出馬することなんてない。自分は平成の明智光秀にはならない」と公言していた。ところが、7月22日のBS日テレ「深層NEWS」で「最初に手を挙げることはない。9月上旬までには判断する」と述べながらも「この国はやっぱり変えていかなければいけないと思う。そういった仕事はいずれチャレンジしてみたい」とし、出馬への意欲を強く示唆した。

元幹事長の石破茂氏も21日、地元の鳥取市で「(判断を示すのは)お盆が一つのめどだ」と語りつつ、同日配信のユーチューブ番組で、出馬する場合でも戦力不保持を定めた憲法9条2項を削除するという憲法改正を実現するとの考えを示した。自民党中堅幹部は「自民党員票ではいつも石破さんがトップだ。派閥が解消されたことで国会議員票がまとまらない状況は石破さんに有利に働く。勝てないかもしれないが負けない『選挙の顔』にはなり得る」と評価した。

河野太郎(デジタル担当相)は出馬意欲満々だ。前回2021年の総裁選で、第一回投票が岸田氏256票(国会議員146、党員110)に対し、255票(同86、同169)とわずか1票差だった。上位二人の決選投票で岸田氏257(国会議員249、都道府県連8)、河野氏170(同131、同39)と、地方票では勝ちながら国会議員票で負けた。「地方に強いのは自分だ。自分こそ党の顔に相応しいと思い込んでいるようだ」(党本部職員)。6月26日夜、自身所属の麻生派率いる麻生太郎副総裁と会談し、出馬への意欲を伝えたという。

このほか、高市早苗氏や青山繁晴氏らが「ポスト岸田」候補として名前が挙がっているが、党本部職員の選挙通は、東大法卒、ハーバード大学ケネディー行政大学院修了の小林鷹之・前経済安全保障担当相(千葉2区、49歳)が「若くて政策力があり、財務省職員でありながら国家の行く末を憂い、辞職して公選で勝ち抜き出馬した行動力がある」として名前が急浮上してきたと強調する。

一方、首相は、側近らと再選に向けた意見交換を重ねている。ある党幹部(閣僚経験者)も「岸田さんもスパッと辞めたら」と語るが、「ポストへの執着心はそうとうなものだ」とも指摘している。

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