【無料公開】#138 日本で信教の自由を守る政党はあるのか
リアルアメリカ〜知られざる政治経済・社会・メディアのいま〜
#138
【無料公開】日本で信教の自由を守る政党はあるのか
- text by 渡瀬裕哉
-
わたせ・ゆうや=国際情勢アナリスト
早稲田大学公共政策研究所招聘研究員。トランプ大統領当選を世論調査・現地調査などを通じて的中させ、日系・外資系ファンド30社以上にトランプ政権の動向に関するポリティカルアナリシスを提供する国際情勢アナリストとして活躍。著書『トランプの黒幕 共和党保守派の正体』(祥伝社)は、Amazonカテゴリー「アメリカ」1位を獲得。主なメディア出演実績・テレビ朝日「ワイド!スクランブル」、雑誌「プレジデント」「ダイヤモンド」など。

第1次トランプ政権時代に信仰の自由を守る大統領令を交付して以来、トランプ政権は一貫して信仰の自由を守り続けている。そして、今年5月1日「信仰の自由委員会」を大統領で発足し、民主党による様々な宗教行為を敵視する政策を廃止する方向に舵を切った。
「宗教事務局」設立は21世紀の大覚醒運動の一部!?
この委員会は、大統領が指名する委員長と副委員長、司法長官、住宅都市開発長官、国内政策担当大統領補佐官、宗教指導者、法曹関係者、学者などによって構成され、任期は来年の7月4日までとされている。この任期は独立記念日と同一であるため、トランプ政権は来年の中間選挙に向けて同委員会の実績を提示し、信仰の自由に関する一大セレモニーを実施するのではないかと推測される。
同委員会の所掌範囲は「牧師、宗教指導者、礼拝施設、宗教に基づく機関、宗教的講演者の合衆国憲法修正第1条上の権利」「米国各地における多様な宗教礼拝施設に対する攻撃」「宗教団体の銀行取引停止」「教師、学生、軍隊の宗教指導者、軍人、雇用主、従業員の合衆国憲法修正第1条上の権利」「医療分野における良心保護とワクチン接種義務に関する問題」「子供の養育、養育、教育に関する親の権限」「公立学校における自発的な祈りや宗教教育のための時間の確保」「宗教的イメージを含む政府の展示物」などに関する助言を含んでいる。
また、トランプ大統領は大統領府内に宗教事務局を設立した。初代局長はポーラ・ホワイト女史である。彼女はトランプ大統領の宗教顧問を務め、米国内での信仰の自由に関して様々な助言を行っている。大統領府内に宗教関係者が部局を持つことは画期的な出来事であり、これはトランプ政権の信仰の自由を守る意思が極めて強固であることを意味している。
では、何故このような委員会や事務局が必要となったのだろうか。過去の米国に必要が無かったものが今わざわざ創設される理由は何か。有識者の中には、この出来事を21世紀の大覚醒運動の一部と見做す人々もいる。実際、筆者もそのような言説を耳にすることがある。
世界中で高まりつつあるリベラル左派勢力への反感
しかし、筆者はトランプ政権の方針はより単純な理由で説明がつくと思う。これは政府の肥大化が止まらなくなり、人間の内面にまでそれが及んできたことへの反発である。実際、元々この世の成り立ちについて説明できる科学者は一人もいない。科学者の言葉は全て仮説にすぎないことは自明である。したがって、世界の成り立ちを説明する宗教を信じる人がいたとしても、それは何らおかしなことではなく普通のことだ。ところが、リベラルな左派勢力はこのような当たり前のことを否定している。それどこか、リベラルな価値観は個々人の信仰よりも普遍的であるかのように振る舞い、様々な宗教行為を社会的に制限するように働きかけてきた。
トランプ政権が行っている信仰の自由を守る一連の行為は、このような行き過ぎたリベラル左派勢力への対抗運動の結果である。リベラル左派勢力への反感は世界中で高まりつつあるため、いずれ世界中で同様の動きが活発化する可能性もある。その時、日本はどうするのだろうか。世界は個々人の世界に対する認識を巡る戦いに突入しつつある。
(わたせ・ゆうや=国際情勢アナリスト)