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#157 参院修正予算案採決が焦点 〜 衆院可決案の自然成立は回避か 〜

aap_heiwataishi
ウォッチ!永田町〜ここがポイント国会情勢〜

参院修正予算案採決が焦点 〜 衆院可決案の自然成立は回避か 〜

石破茂首相の政権運営がますます厳しくなってきた。その裏付けが、マスコミ各社の最新世論調査による結果で次々と明らかになっている。

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政権支持率最低に 焦点は予算案

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が3月22、23両日に実施した合同世論調査によると、石破内閣の支持率が昨年10月の政権発足以来、最低の30.4%となった。「現役世代での不人気に拍車がかかったうえ、『岩盤支持層』だった高齢層の支持離れ」があったという。首相の商品券配布問題に加え、国民民主党との協議が決裂した「103万円の壁」引き上げ問題への対応や、高額療養費制度の負担上限額引き上げをめぐる迷走も影響した可能性があるようだ。

共同通信が同じ3月22、23両日に行った全国電話世論調査でも、内閣支持率は前回2月の調査から12.0ポイント下落し、政権発足以来最低の27%だった。一方、不支持は16.0ポイント増の57.8%になった。10万円分の商品券問題が大きく影響したという。日経新聞、毎日新聞やその他の調査結果も同様に、支持率低下傾向を示した。

「令和7年度予算案の今年度内成立を目指してきた石破政権だが、首相の『商品券配布問題』が新たに浮上し、『政治とカネ』の問題で野党が再び攻勢を強めることになった。首相は頭を下げ続けるばかりで、支持率下落はやむを得まい。ただ、焦点の予算案だが、4月2日までに参院で修正案を可決できなければ、衆院ですでに可決していた予算案が自然成立してしまう。際どいタイミングに来ている」と政界関係者は指摘する。

もし、参院での修正案が2日までに成立せず、修正前の衆院案が本予算になると、石破首相の求心力は低下しよう。野党側の責任も問われることになろう。政府・与党は、高額療養費制度の自己負担上限引き上げの全面凍結へと方針を転じて修正した予算案を参院で28日に可決し、それを31日までに成立させたい考え。ただ、本会議での採決日程は未定で、立憲民主党などの野党側が政府・与党の審議スケジュールに従わなければ野党自身が求めた修正が通らない。そのため、「2日中の参院採決に野党が応じる可能性は大きい。別の委員会での与野党攻防に移ろう」(マスコミ関係者)。

「年金テーマの選挙は負ける」

次の対決テーマは、「年金制度改革」と「政治とカネ」の問題が挙げられる。特に年金問題は国政選挙に大きく響く。07年の参院選では、「消えた年金問題」で第1次安倍政権を大敗に追い込み、過半数を失った安倍首相は政権から去り、民主党政権の誕生につながった“成功体験”が野党側にある。「絶好の機会だ」として政府・与党に対し、今国会に改革法案を提出し議論をすべきだと強く主張している。

一方、「過去の経験上、年金をテーマにした選挙は負ける」(自民厚生部会メンバー)とし、対応が定まらないのが自民党だ。4月中旬には法案提出にこぎつけたいとし、議論を本格化させてはいる。だが、将来の年金の給付水準を引き上げようとしても追加の国庫負担の財源をどうするかが課題だ。「厚生年金」の積立金を活用し、「基礎年金(国民年金)の給付水準を底上げする」としても、一時的に厚生年金の給付水準が下がる。こうした懸念から自民内からは参院選後への先送り論がくすぶっているが、立憲民主の長妻昭代表代行はこの点に絞った対案を出して政府・与党を攻め立てる戦略だ。日本維新の会や国民民主など他の野党も、参院選に向けて国民の関心の高い年金改革の議論を盛り上げて有利に戦いたいとの考えでは一致している。

「政治とカネ」の問題では、石破首相による商品券問題が尾を引いている。首相が3月3日夜、昨秋の衆院選で当選した新人議員15人を首相公邸に招いて懇談会を開いたのだが、その当日の日中、首相の秘書が各新人議員の事務所を訪れて1人10万円分の商品券を渡していた、というものだ。首相は予算委員会などで猛烈なバッシングを受け「世の中の方々の感覚と乖離があったと痛切に思う。大変申し訳ない」と謝罪の繰り返しとなった。与党の公明党からも「疑問に丁寧に答えていく誠実な姿勢が必要」と距離を置かれ、野党が求める政治倫理審査会への出席に追い込まれる見通しだ。加えて「企業・団体献金」の法案審議も本格化する。

立憲民主の野田佳彦代表は青森市内での講演(3月16日)で、石破首相の退陣を求める自民内の声(西田昌司参院議員が12日に行った党所属参院議員総会での発言)に触れ、「トップを早く代えて清新なイメージで参院選に臨みたい、衆院を解散したいということだろうが、そうは問屋が卸さない」と強調した。徹底的に石破首相を批判し自民党を弱体化させながら参院選に臨みたい意向のようだ。
(やまおか・ただし=政治ジャーナリスト)

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