いまさら聞けない「仏教の基礎知識」

いまさら聞けない「仏教の基礎知識」 第8回

「戒」の種類と「解脱」

text by 魚谷俊輔

仏教の修行は①戒(かい)②定(じょう)③慧(え)という3つのステップからなっています。「戒」は戒めを守ること、「定」は瞑想、「慧」は智慧のことです。つまり、欲望から解放されて、瞑想をして、深く心が澄んでくると、世の中がどういう原理によって動いているのかが悟れるようになるということです。

それではステップ1の「戒」ですが、この戒にどのようなものがあるかと言うと、在家信者であるか出家信者であるかによって違い、段階的に戒が厳しくなっていきます。最も根本的な戒を「五戒」と言います。①酒を飲んではならない②嘘をついてはならない③邪淫をはたらいてはならない④盗んではならない⑤無駄な殺生をしてはならない——の5つです。現代日本の世俗社会に生きる上で、この5つを完璧に守るというのはかなり難しいことであると思います。しかし、これが出来なかったら仏教徒になれないわけでありまして、それぐらい厳しいものです。

八斎戒になりますと、⑥快適なところで起居してはならない⑦歌、音楽、踊り等の娯楽をしてはならない⑧身を飾りたててはならない——とあるわけですが、ここまでは在家信者が守る戒なのです。在家信者でもかなり基準の高い信仰生活を要求されていることになります。さらに出家信者になると、⑨金銀財宝に関わってはならない⑩決められた時間以外に食事をとってはならない——が加わります。当時の修行僧というのは、午前中に1回食事をするだけで、他の時間は食事をしなかったのです。

そのような禁欲的な生活をして、その上にさらに「具足戒」というのがあって、比丘(男性の正式出家者)の場合には250の戒律を守らなければならず、比丘尼(女性の正式出家者)の場合には348の戒律を守らなければなりませんでした。これぐらい厳しい出家者の戒があって、これを守ってはじめて、次の段階である瞑想に入って、最終的に悟れるということでありますから、非常に厳しい宗教ということになります。

こうした修行をして仏教が目指したのは何かというと、解脱であり、涅槃寂静という境地に至ることです。これが仏教の目指している究極的な理想であり、目標です。仏教以前からインドには「六道輪廻」という考え方があって、人間は死ぬと次の世である「来世」に行くわけですが、それが6つの世界に分けられています。いま人間界にいるとすると、その上には天上界というより高い世界があって、人間界の下には修羅、畜生、餓鬼、地獄という世界があるわけです。そして、生きているときの行いによって、次に行く世界が決まって、この6つの世界をぐるぐる輪廻しているというわけです。この「六道輪廻」という世界も、まだ迷いの世界なので、ここから脱して仏の世界に入ることを「解脱」と呼んだわけです。つまり仏の世界というのは、この6つの世界をさらに超越した上の世界であって、その世界に入ることを「解脱」と呼んだのです。

(魚谷俊輔/UPF-Japan事務総長)

⑧「戒」の種類と「解脱」

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