いまさら聞けない「仏教の基礎知識」

いまさら聞けない「仏教の基礎知識」 第20回

空海と真言宗

text by 魚谷俊輔


空海の歩みについてまとめてみましょう。実は、空海の幼いころのことはあまりよく分かっておりません。讃岐国(香川県)の豪族の家に生まれ、若き日は私度僧として、すなわち官僧ではなく、衆生の僧として修行を積んだと思われます。804年、31歳のときに唐に渡り、3カ月で梵語を修め、密教の第7祖・恵果(けいか)の下で学び、密教のすべてを伝授されました。そして、恵果から譲られた多くの経典、仏像、仏画、法具のすべてを船に積み込んで帰国しました。帰国後、密教を体系化し、真言宗を開きました。816年には、高野山の金剛峰寺を開きます。ここを本山として日本の真言宗が出発するわけです。823年には、嵯峨天皇より京都に東寺を賜わり、真言密教の拠点としました。

空海は仏教だけではなくて、唐の最新技術を駆使した土木事業まで学んで来ました。それで多くの土木工事を指揮することを通して社会貢献をしました。日本最大の溜池である満濃池の改修工事も、空海が持って帰った技術によってなされました。真言宗では、弘法大師・空海は死んだのではなくて、62歳のときに高野山で「入定(にゅうじょう)」したと考えられています。すなわち、永遠の禅定(瞑想)を奥の院でやっているのだということです。

私自身、高野山の奥の院を訪ねたことがありますが、高野山自体がまるでエルサレムを彷彿とさせるような「宗教都市」であることに感銘を受けました。奥の院の「一の橋」の入口から、空海がいまも瞑想を続ける「御廟」まで続く参道は、樹齢千年を超える杉や高野槙の巨木に囲まれた並木道で、静粛な雰囲気が漂っている上に、その両脇には数多くの歴史上の人物や全国の藩主・大名の墓が苔むした姿で並んでおり、その神秘的な雰囲気は見る者を圧倒します。

真言宗とはどういう宗教かというと、本尊は大日如来です。これは宇宙そのもの、万物の源であると信じられています。主な経典は、大日経と金剛頂経です。教えの中心は「即身成仏(そくしんじょうぶつ)」です。これは、人間が現世においてそのまま仏になれるんだという教えです。真言宗の実践として非常に有名なのが護摩供養です。「護摩(ごま)」というのは、「焚く」という意味の「ホーマ」の表音であって、日本語では「ごま」と言います。護摩を焚いて祈祷することによって願いをかなえるのが、密教の代表的な祈祷法であると言えます。

(魚谷俊輔/UPF-Japan事務総長)

⑳空海と真言宗

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