<最終回>現代日本の仏教②
いまさら聞けない「仏教の基礎知識」
<最終回> 現代日本の仏教②
- UPF-Japan事務総長 | 魚谷俊輔
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1964年生まれ。千葉県出身。東京工業大学工学部化学工学科卒。95年に米国統一神学大学院(UTS)神学課程を卒業。2000年に日本に世界平和超宗教超国家連合(IIFWP)が創設されるにともない、事務次長に就任。05年より、国連NGO・UPF-Japanの事務次長、17年8月より同事務総長。
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現代日本人の宗教性に関する調査結果で、もう一つ興味深いものがあります。特定の信仰を持っていなかったとしても、宗教的なものの考え方の中で、「絶対にある」と思う人と、「たぶんある」と思う人の数を足すと、このようなグラフになります。「祖先の霊的な力」を47%の人があると思っています。「死後の世界」があると思っている人は44%です。「輪廻転生」があると思っている人は42%です。「涅槃」があると思っている人は36%です。「天国」は36%、「地獄」は30%、「宗教的奇跡」は17%の人があると思っています。このように、日本人は「自分は信仰を持っていない」という人が7割ぐらいいるにもかかわらず、宗教的なものの考え方は結構持っているのです。これが日本人の宗教性の特徴ではないかと思います。
現代日本仏教の現状を、批判する側面と評価する側面で整理すると大体こんな感じになります。仏教に対する批判的な見解としては、①儀礼や形式だけの形骸化した宗教になっている②現世利益的な祈祷・祈願・呪術ばっかりをやっている③葬式仏教・職業仏教・世襲仏教ということで、代々お寺をやっている家が職業として葬儀をやっているに過ぎない④都市部に人口が流出することによって、伝統的な檀家制度が衰退しており、仏教は崩壊の危機にある――というようなことがよく言われます。
一方、仏教を評価する見解としては、①それでも日本人はお葬式といえば仏教だし、お墓参りは今でも行われている②お盆やお彼岸などをきちっとやる人も多く、文化の中にちゃんと生きている③日本人の死生観にはいまも仏教的な考え方が大きな影響を及ぼしている④座禅をしてみたいとか、四国のお遍路さんや札所巡りなどの仏教的な修行はいまでも人気があり、そうした行為を通して宗教的な体験をする人もいるので、決して死んではいない――というようなことがよく言われます。
この2つを総合するとどうなるかと言うと、既成のお寺とか教団に対しては批判的ですが、人々の心の中には仏教的な考えが残っているので、そうした宗教性が土台となって、新しい宗教を受け入れる「精神的土壌」として、日本の仏教伝統は機能しているのではないかということになります。ですから日本の新宗教は、伝統教団によって管理されてはいないけれども何となく宗教性を持っている人たちに呼びかけて、その人たちを伝道・布教することによって教勢を伸ばしていったと考えられるわけです。(終わり)