いまさら聞けない「仏教の基礎知識」

いまさら聞けない「仏教の基礎知識」 第24回

「絶対他力」

text by 魚谷俊輔


浄土真宗の特徴は、「絶対他力」にあります。このシリーズの初めに私は、「仏教は自力型の宗教である」と書きました。それが1000年をかけて日本にやってきて、紆余曲折を経ながら、最後は「絶対他力」まで行ってしまうのでありますから、宗教とはどれほど変わるものなのかという良い例だと思います。

親鸞は、他の宗派の開祖たちと違い、救われるべき衆生と同じ俗世間に身を置き、凡夫の苦しみを味わいました。そこから「絶対他力」の信仰が生まれたわけです。阿弥陀如来の立てた本願により、阿弥陀如来を信じたその瞬間に極楽往生が決定する、という信仰です。親鸞といえば『歎異抄』が有名ですが、これは親鸞自身の著作ではありません。彼が90歳で没した後に、弟子である唯円によってまとめられた法語集です。親鸞の人間的魅力が現れている本です。「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」という言葉は非常に有名です。これを悪人正機説といいます。阿弥陀仏が衆生を救おうとする願いは、善人でさえ成仏させるのだから、他力本願を信じる悪人は当然成仏できるという意味です。善人は自力で悟ろうとしますが、悪人は他力に頼るしかないので、もっと成仏できるのだということです。

このように仏教は浄土真宗に至って、修行型・自力型の宗教から救済型・他力型の宗教に完全に変容しました。

浄土系の流れをくむ鎌倉新仏教の一つが、一遍(1239〜1289)を開祖とする時宗です。この人は鎌倉時代の人で、伊予松山で武家に生まれたのですが、14歳で浄土宗の僧になりました。彼は35歳から遊行僧として、一所不在の流浪の生活を送りました。彼は念仏を唱えながら布教をしたわけですが、「踊り念仏」を広めました。彼の教えはもっとシンプルになります。親鸞は信仰を強調し、信ずれば救われると言ったわけですが、一遍の場合には、信仰があるなしにかかわらず、「南無阿弥陀仏」と名号をとなえれば救われるんだと説いたわけです。このように、かなり極端にシンプルになっていきます。これが浄土系の流れなんですが、鎌倉新仏教にはもう一つの流れがあります。それが禅系の流れです。禅宗に関しては、次の回で解説します。

(魚谷俊輔/UPF-Japan事務総長)

㉔「絶対他力」

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