#11 密教と禅

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いまさら聞けない「仏教の基礎知識」

#11 密教と禅

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UPF-Japan事務総長 | 魚谷俊輔

1964年生まれ。千葉県出身。東京工業大学工学部化学工学科卒。95年に米国統一神学大学院(UTS)神学課程を卒業。2000年に日本に世界平和超宗教超国家連合(IIFWP)が創設されるにともない、事務次長に就任。05年より、国連NGO・UPF-Japanの事務次長、17年8月より同事務総長。

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5世紀ごろになると、大乗仏教は次第にヒンドゥー教がもともと持っていた呪術の要素と混ざっていき、「密教」が生まれることになります。真言宗でいうところの「真言」とは、サンスクリット語でいうマントラのことで、儀式のときにつぶやく「呪文」を意味します。密教はインドに出現して中国で発展していくわけですが、この伝統がやがて日本にも伝わります。これを相続した2つの大きな宗派が天台宗と真言宗ということになります。

密教の特徴の1つは、ヒンドゥー教的な呪術の要素が仏教に取り入れられたということです。これはお釈迦様が禁じたものであったため、本来は原始仏教にはなかったものでした。それが時間とともに入り込んできたということです。

2つ目の特徴は、神秘主義と秘密主義です。例えば、曼荼羅の前で印を結びますが、これを「身密」と言います。心に大日如来を念じることを「意密」と言います。そして、口に真言を称えることを「口密」と言います。これらを合わせて「三密の行」と言い、それによって大日如来と一体化し、現在の身体のままで成仏できると教えました。これを「即身成仏」と言います。これはいわゆるミイラになる即身仏とは意味が違います。肉体を持ったままで成仏できるという意味です。これらの儀式は師から弟子に秘密裏に伝えられたので、「密教」というわけです。

密教の3つ目の特徴は象徴主義です。真言宗のお寺に行くと、必ず「金剛界曼荼羅」と「胎蔵界曼荼羅」という2つの曼荼羅がかかっています。これらは仏を中心とする宇宙を象徴的に表したものです。こういう神秘的な仏教が出現するようになるわけです。

それからもうひとつ出現した仏教の伝統で日本に大きな影響を与えたものが、「禅」です。日本で禅宗といえば曹洞宗と臨済宗です。これは、中国で発展した禅の伝統を日本に持ち帰ってきたことにより始まりました。「禅」は何かというと、「ヨーガ」と同じ意味でありまして、ヨーガの境地を表す「禅那」(ディヤーナ)から1字をとったものです。これはもともとお釈迦様の教えの中に「禅定」すなわち瞑想修行があったわけですが、それを特に強調する宗派が生まれたということです。

中国禅の開祖とされる菩提達磨、これは私たちの良く知っている「達磨様」です。この人はもともとインド人なんですが、中国に渡っていきます。彼は520年頃に、南インドから北魏に到着して、有名な嵩山少林寺に入り、禅を教え始めました。少林寺は、少林武術の中心地として有名ですね。そこに慧可(けいか)という中国人の弟子が入って、中国禅の法統が始まったと言われています。こうして中国で禅の伝統が受け継がれていきます。そこに日本から留学して、そこで禅を学んで持ち帰った人が、栄西や道元のような日本の禅宗の開祖になるわけです。

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