いまさら聞けない「神道の基礎知識」

いまさら聞けない「神道の基礎知識」 第3回

神社の起源

text by 魚谷俊輔


先回は神道における神の特徴を4つの観点からまとめましたが、今回はもう一つの特徴を紹介しましょう。それは神道においては「神を祀る」ことによって神になる、という考え方があることです。これは一神教における神との大きな違いの一つです。

キリスト教とユダヤ教の神である「ヤハウェ」や、イスラム教の神である「アッラー」は、人間が礼拝する前に既に超越者として存在しています。あくまでも神が原因・主体であり、人間が結果・対象であり、この関係が逆転することはありません。人間の行いによって何者かが神になるという発想はあり得ないのです。

ところが、神道の場合には神を祀る主体は人間であり、聖域を定めたり、社殿を建てたりして「神を祀る」のです。ある意味では、「人が祀ることによって神になる」と言ってよいでしょう。この「神を祀る」ということと、神社の創建とは深く結びついています。神道で神を祀るということは、特定の場所と深く関係しています。イスラム教やキリスト教では、神は世界を超越しているか、あるいは世界に遍在していると考えられており、一定の場所に神を祀るということはありません。

それでは神社とは何でしょうか? 現代人であるわれわれは神社といえば建物を連想しますが、実は建物は神社の本質ではありません。神社は「神の社(やしろ)」であり、もともとは神を祀るべき神聖な空き地のことであり、普段は注連縄(しめなわ)で囲っておく禁足地だったのです。

ですから、神社の原型は神霊の降臨する空間であり、禁足地であり、聖なる空間でした。それがやがて、榊(=境木)を立てて俗なる空間との境界の目印とするようになりました。さらに玉垣を巡らせて神の空間を守るようになり、その後に仏教寺院の影響で社殿が建てられるようになったのです。

鎌倉時代(13世紀)に描かれた京都府亀岡の「出雲神社?示図」という絵が残っていますが、そこに描かれている神社には社殿がなく、鳥居の後ろに出雲神社の御神体である御影山が描かれているだけです。鳥居と神体山の間には建物はありません。このように社殿が一切ないのが、古代の神社の姿であると考えられています。

(魚谷俊輔/UPF-Japan事務総長)

神社の起源

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