いまさら聞けない「神道の基礎知識」

いまさら聞けない「神道の基礎知識」 第14回

人間神①

text by 魚谷俊輔


さてここで、神社に祀られる神々の種類についてまとめてみましょう。

 ①記紀の神々:天照大御神(伊勢神宮)、須佐之男命(氷川神社)
 ②土着の神:大物主神(大神神社)、寒川比古命(寒川神社)
 ③習合神:八幡大菩薩(宇佐八幡)、熊野三所権現(熊野三社)
 ④天皇・皇族:桓武天皇(平安神宮)、明治天皇(明治神宮)
 ⑤英雄・功労者:徳川家康(日光東照宮)、東郷平八郎(東郷神社)
 ⑥御霊神:早良親王(御領神社)、菅原道真(北野天満宮)、平将門(神田明神)、崇徳天皇(白峯神社)

この中で、④~⑥を「人間神」と分類することができます。これは、実在した人物が、死んだ後に神として祀られるということであり、一神教の世界では考えられない現象ではありますが、神道においては一般的なことです。実はローマの宗教においても、人が死んで神になることはあったので、神道と類似していると言えます。①~③は、歴史上実在したことが分かっている人物が神になったのではなく、最初から神であった神話的な存在がまつられているのに対して、④~⑥は歴史上実在した人物が死んだ後に神になったという点が異なるのです。④の亡くなった天皇を神として祀るというのは、近代になってよく見られるようになった現象です。⑤は故人が生前になした行いを顕彰するために祀るということで、上記以外の例としては、柿本人麿、菅原道真、安倍晴明、坂田金時、楠木正成、源義経、後醍醐天皇、新田義貞、織田信長、豊臣秀吉、武田信玄、上杉謙信、吉田松陰、二宮尊徳、西郷隆盛、乃木希典などを挙げることができます。⑥は恨みを持って死んだ人物の祟りを鎮めるために祀るということで、その代表例はなんといっても菅原道真を祀った天満宮ですが、実は御霊(ごりょう)として祀られた菅原道真に対する信仰は、天神信仰と習合して独特な発展を遂げていきます。

菅原道真は、845年から903にかけて生きた平安時代の貴族であり、学者であり、政治家です。彼は優秀な学者であり政府の役人でありましたが、生前にそれほど目覚ましい功績をあげたわけではありません。その彼がなぜ死んだ後に神になったのかについては、次回詳しく説明します。

(魚谷俊輔/UPF-Japan事務総長)

人間神①

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