いまさら聞けない「日本基督教史」

いまさら聞けない「日本基督教史」 第8回

キリスト教が躍進した理由②

text by 魚谷俊輔


先回から、キリシタン時代にキリスト教が躍進した理由を説明し始めました。今回はその続きです。

当時は戦国時代の末期で、織田信長がまさに天下を統一しようとしていた時期でした。織田信長がキリスト教を保護したということも、国家主権からの迫害がなかったということですから、キリスト教にとって大変有利な材料でした。織田信長がキリスト教を保護した動機は、やはり鉄砲などの南蛮貿易の利益にあったということですから、世俗的な動機ということになります。

また、仏教勢力に対する制圧という目論見も織田信長にはあったようです。当時は「僧兵」というものがあり、お寺が軍隊を持っていました。比叡山延暦寺などは非常に大きなお寺の軍隊を持っていました。それが信長の言うことを聞かないということで、信長の怒りを買っていました。それに対する対抗勢力としてキリスト教を保護したという側面もあります。

加えて、イエズス会による「適応主義」の実践もあったので、日本の土着の文化とあまり摩擦を起こさずに宣教することができたというのも、飛躍することができた理由だと言えます。

より内面的な理由を挙げれば、戦国時代の混乱の中で、既存の仏教勢力は宗教的生命を失っており、人々は精神的な救済を求めていたという側面があります。この頃は、戦国時代に突入してかなりの年月が経っていました。世の中は戦乱に明け暮れていて、人々の心は荒れて飢え乾いていたのです。そういう人々の悩みや苦しみに対して仏教が救いをもたらしていたかというと、形骸化していた仏教は、救いをもたらしていなかったのです。そこにキリスト教という新しい宗教がやってきて、天国の理想を説いたので、人々の心がそこに吸い付けられていったのです。当時の人々の目には、仏教の僧侶の自堕落な生活に比べて、キリスト教の宣教師の禁欲的な姿は大変素晴らしく映ったわけです。

さらに、既存の仏教の教えの中には「地獄と極楽」という来世観がありました。キリスト教の教えにも「地獄と天国」という来世観がありますので、来世に対する考え方が非常によく似ていたということも、仏教を土台としてキリスト教を理解する上で役立ったと言えると思います。こうした理由が重なって、初期のキリスト教は大名からも庶民からも多くの支持を受けて飛躍的に伸びていくことになります。

(魚谷俊輔/UPF-Japan事務総長)

キリスト教が躍進した理由②

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