#2 北朝鮮の核ミサイル開発、どの段階?

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魚谷事務総長の時事解説

#2 北朝鮮の核ミサイル開発、どの段階?

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UPF-Japan事務総長 | 魚谷俊輔

1964年生まれ。千葉県出身。東京工業大学工学部化学工学科卒。95年に米国統一神学大学院(UTS)神学課程を卒業。2000年に日本に世界平和超宗教超国家連合(IIFWP)が創設されるにともない、事務次長に就任。05年より、国連NGO・UPF-Japanの事務次長、17年8月より同事務総長。

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北朝鮮はなぜICBMの開発にこだわるのか?

核兵器を敵地に運搬するための最も現実的な手段だから

北朝鮮は核兵器とミサイル開発に集中していますが、核兵器とミサイルはセットであると言えます。なぜなら、核兵器を持っていても敵地に運搬する手段がなければ意味がないからです。日本の広島と長崎に原爆が投下された際には、制空権を握っていた米軍がB-29に原爆を搭載して真上から投下したわけですが、北朝鮮が米国を相手に制空権を握って戦略爆撃機を飛ばすなどということは現実的にあり得ません。

そこで弾道ミサイルが最も現実味を持つ選択肢となるのです。北朝鮮軍の通常兵器の装備は、年代物のお粗末なものばかりです。そこで北朝鮮は経済的に苦しい中で、核兵器とミサイルに集中的な投資を続けてきたのです。これはある意味で「選択と集中」であり、一つの合理的な戦略であると言えます。

北朝鮮の核ミサイル開発はどの段階まで来ているのか

専門家の間で意見は分かれている

今年9月3日の朝鮮中央通信電子版に、北朝鮮で新たに開発されたICBMの弾頭部に装備する水爆とされる物体を視察する金正恩委員長の写真が掲載されました。そこにはひょうたん型の金属の物体が写されていましたが、これがブラフ(はったり)に過ぎないのか、それともリアルなのかが話題になっています。水爆は、核分裂を起こすプライマリー(第1段階)の部分と、核融合を起こすセカンダリー(第2段階)の部分によって構成されるので、ひょうたん型になるのが特徴であるとされるからです。

北朝鮮が「対米核抑止力の達成」、すなわち核搭載可能なICBM保有という最終目標までにクリアすべき課題は二つであると言われています。一つ目は、ミサイルに搭載する核兵器の小型化です。これに関しては、ICBMに搭載できる程度まで小型化できているという専門家と、まだだという専門家がいます。日本に投下された原爆は約5トンの重さがありましたが、これほど重いものをミサイルに搭載することはできません。現時点では1トンまで小型化した核弾頭を作れるが、米国まで飛ばすには500キロまで小型化しなければならず、これはまだなされていないという分析もあります。

もう一つの課題は、大気圏再突入に耐えられる弾頭の開発です。大気圏外に出たミサイルの弾頭がターゲットに到達するには大気圏に再突入しなければなりませんが、この時にものすごい高熱が発生します。その熱に弾頭が耐えられることを実験で確認しなければ実用化はできません。ある専門家は、ロフテッド軌道による発射や日本海への発射によってデータを収集していると言います。しかし、別の専門家は北朝鮮は大気圏再突入のデータは持っていないと主張します。人工衛星の大気圏突入のときもそうですが、物体が宇宙から地球に戻るには、6度くらいの浅い角度で再突入しないと燃え尽きてしまいます。ミサイルをロフテッド軌道で飛ばしても、安定的に飛ぶことを確認できるだけで、再突入は急角度になるので弾頭は燃え尽きてしまうというのです。また海に飛ばしても、落下エリアに船でも配置しない限りデータは取れません。ロシアや中国の広大な土地で実験できれば必要なデータは取れるでしょうが、北朝鮮はそれをやっていないので、大気圏再突入のデータは何も持っていないと分析する専門家もいるのです。

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