いまさら聞けない「北朝鮮問題」

Q.米国と北朝鮮の戦争が起こったらどうなるか?

A.米国の勝利は確実だが、周辺国の被害は避けられない

軍事専門家は、もし米国と北朝鮮の間に戦争が起こったら米国の軍事力が北朝鮮を圧倒し、最終的に米国が勝利することは間違いないと断言します。北朝鮮が勝利する可能性はゼロに等しく、その意味で北朝鮮にとって戦火を交えることは自殺行為に等しいと言えるでしょう。そして現時点では、この戦争によって米国本土が被害を受けることはありません。専門家の描く戦争の展開は以下のようなものです。

まず米国は、敵地攻撃に最も効果的で、かつ米側に被害の少ないトマホークによる一斉攻撃を行うでしょう。これに対して北朝鮮は対応できず、かなりの被害を受けるものと思われます。次に米国は、B1爆撃機によるバンカーバスター(地下貫通弾)で地下の核施設を攻撃します。続いて弾道弾基地、非武装地帯(DMZ)の北側に配置されている長距離砲群、指令中枢などを次々に攻撃して、北朝鮮に甚大な被害を与えることでしょう。

しかし、こうした遠隔操作によるピンポイント攻撃だけで北朝鮮軍を全滅させることはできません。米国が地上軍を上陸させなければ最終的な決着はつきませんが、それまでには時間がかかり、その間は北朝鮮の反撃を受けることになります。1994年の第一次核危機のとき、板門店で南北会談に臨んだ北朝鮮代表が「戦争になったらソウルは火の海になる」と発言しましたが、これは具体的にはスカッドミサイルと長距離砲によるソウルの攻撃を指すものと思われます。そして被害を受けるのは韓国だけではありません。ノドンミサイルによる在日米軍基地の攻撃も考えられるため、戦争が起これば日本も他人事ではいられません。北朝鮮東部の舞水端里(ムスダンリ)の東海衛星発射場を中心として半径1300kmがノドンミサイルの射程ですが、これには日本全域がほぼ含まれます。もし核弾頭を積んでミサイル攻撃をすれば、甚大な被害が出ることになります。

いま米国では、「ソウル被害のない北朝鮮攻撃はありえるか?」という問題が関心を集めています。マティス米国防長官は2017年9月18日、「ソウルを重大な危険にさらさない対北朝鮮軍事オプションがある」と述べましたが、その言い方は「イエス、ある。しかし、詳細を述べることは控える」というものでした。

これに対して同年10月1日付の北朝鮮の労働新聞電子版は、「そもそもあり得ない」と反論し、戦争になれば韓国は廃墟になると威嚇しました。米国の軍事専門家とマスコミはマティス発言に対して懐疑的です。それはDMZからソウルまでは約50キロであり、車で1時間もあれば行ける距離にソウルが位置しているからです。常識的に考えれば、米朝の戦争が始まれば韓国が無傷で済むということはあり得ません。

(魚谷俊輔UPF-Japan事務総長)

⑩いざ米朝戦争になったらどうなる?

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