いまさら聞けない「北朝鮮問題」

Q.日本がやるべきことは何か?

A.自主防衛力の増強と「専守防衛」の見直し

現在の日本の安全保障政策は、「専守防衛」を原則としています。その意味は、敵の攻撃を受けた後に初めて対応し、しかも自衛のための必要最小限度の範囲内でのみ反撃措置を執ることであり、極めて抑制的な姿勢であると言えます。これはボクシングでいえば、ひたすらディフェンスのみを行い、相手にダメージを与えるようなパンチを打ってはならないということです。

したがって、北朝鮮のミサイルに対してもSM3とPAC3で迎撃することしかできません。しかしながら、そもそも弾道弾を弾道弾で撃ち落とすことは、広大な空間において点で点を叩くことであり、現在の技術では非常に難しいのです。これは実戦においては完璧な防御システムからは程遠いと言わざるを得ません。ミサイルに対する抑止力・防御力を高めるためには、日本に向けて発射される蓋然性が高い場合には、北朝鮮のミサイル基地を先制攻撃できるだけの防衛力を整備する必要があるでしょう。そのためには「専守防衛」という考え方そのものを見直さなければなりません。

これまで日本の安全保障政策は、日米安全保障条約に基づき、相手を攻撃する「槍」の役割は米軍が受け持ち、自衛隊は相手の攻撃から自国を守る「盾」の役目に徹してきました。しかし、今後は自衛隊も一定の「槍」を装備し、その抑止力を強化すべきでしょう。具体的には、対地攻撃力のある戦闘機や、対地攻撃用ミサイルの整備、さらに巡航ミサイルの導入についても検討すべきです。

その意味で、日本政府が航空自衛隊の戦闘機用に3種類の長距離巡航ミサイルを導入する方針を固め、平成30年度予算案に関連経費を計上したことは一歩前進と言えるでしょう。現時点では政府はこれらの措置を政府は「敵基地攻撃を目的としたものではない」としていますが、将来的には対日攻撃をもくろむミサイル発射台を叩く敵基地攻撃能力へと発展させることが可能です。

そうすることで、ようやく自衛隊のあり方が「普通の国」と同じになるわけですが、現在の自衛隊にはさまざまな法的縛りがあるため、それができません。ですから、自衛隊のあり方を「普通の国」と同じにするには、憲法そのものを「普通の国」と同じような内容にすべきなのです。日本もいよいよ、憲法改正を視野に入れて安全保障を考えるべき時を迎えたと言えるでしょう。

「戦力の不保持」を規定する憲法第9条と、「戦力」としての自衛隊の存在の矛盾が長年指摘されてきました。これを解消するために、戦争放棄を定めた第9条第1項の平和主義の理念は守りつつ、第9条第2項を改正して自衛権を明示し、戦力の保持を認めるべきです。加えて、日韓の防衛協力の進展、日米韓三国の安全保障面での連携や相互の理解と信頼が不可欠です。

(魚谷俊輔UPF-Japan事務総長)

<最終回>日米韓の連携強化が不可欠

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