#11 日本に飛来するミサイルは迎撃できる?

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魚谷事務総長の時事解説

#11 日本に飛来するミサイルは迎撃できる?

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UPF-Japan事務総長 | 魚谷俊輔

1964年生まれ。千葉県出身。東京工業大学工学部化学工学科卒。95年に米国統一神学大学院(UTS)神学課程を卒業。2000年に日本に世界平和超宗教超国家連合(IIFWP)が創設されるにともない、事務次長に就任。05年より、国連NGO・UPF-Japanの事務次長、17年8月より同事務総長。

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日本に飛来するミサイルは迎撃できるのか?

迎撃システムは機能するが、100%防ぐことは不可能

現在の日本のミサイル防衛システムは、「スタンダード・ミサイル」(SM3)と「パトリオットミサイル」(PAC3)の二段階で構成されています。SM3は船舶から発射して高高度飛行中(ミッドコース)の敵ミサイルを迎撃するためのもので、イージス弾道ミサイル防衛システムの一部を構成しています。これは日本の海上自衛隊に配備されており、射程は高度300㎞です。一方、PAC3は地上近くまで落ちてきたミサイルを迎撃することを目的とする地対空ミサイルシステムで、射程距離は20〜30㎞です。北朝鮮から発射されたミサイルが日本に到達するのは8〜10分と言われており、この間にレーダーで察知して迎撃しなければなりません。

現在のSM3が抱えている問題は、中距離弾道弾には対応が困難だということです。例えば、高度300㎞以上で飛行するムスダンをSM3で迎撃することはできません。これは北朝鮮がグアムを狙ってムスダンを発射した場合、日本上空を高度300㎞以上で飛ぶため迎撃できないということと、ロフテッド軌道で撃ち上げて日本を狙ったとしても、ミッドコースでは高すぎて迎撃できないということです。

そのほかにも、100%迎撃が困難な理由はいくつかあります。北朝鮮は日本全土のほぼ全域を射程に収めるノドンミサイル(射程1300㎞)だけでも既に400発以上を保有していると言われています。さらに車両搭載の移動式発射システムの整備や、発射地点を予測しがたい潜水艦弾道ミサイル(SLBM)の開発にも取り組んでいます。北朝鮮は、複数のミサイルを同時に発射する能力も保持しており、日本に向けて多数の中長距離ミサイルが同時に発射された場合、現在のミサイル防衛システムですべてを防ぐことは事実上不可能です。

2017年8月29日に北朝鮮が発射したミサイルは、北海道上空を通過し、3つに分かれて着弾しました。これが偶然壊れたのか、多弾頭ミサイルを開発したのかは不明です。もし北朝鮮が大気圏突入後に弾頭が分かれる多弾頭ミサイル技術を開発していれば、これも現在の日本のミサイル防衛技術では迎撃できません。北朝鮮の標的は米軍基地、自衛隊基地、そして原発です。もし稼働中の原発が攻撃されれば、福島原発事故の再来となります。われわれは、北朝鮮の核ミサイル攻撃に対して日本が非常に脆弱な状態にあることを真摯に受け止める必要があります。

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